275. スポーツを文化にするために

【2022年10月10日配信】     




「学生野球考」 



    慶應義塾大学野球部監督  前田 祐吉



 史上最高演技


 史上最高選手

  


  勇気ある発言


 「オンニ、ここで記念に一緒に撮りましょ」


 「オレは笑わないが、笑って何が悪いんだ」


 葉隠・武士道を覆す号泣


   


 

   


          


 「サード!もう一丁!」「ヨーシこい」

いう元気な掛け声の間に、「カーン」と

いう快いバットの音がひびくグラウンドが

私の職場である。だれもが真剣に野球に取

り組み、どの顔もスポーツの喜びに輝いて

いる。息子ほどの年齢の青年たちに囲まれ、

好きな野球に打ち込むことのできる私は、

つくづく、しあわせ者だと思う。


 学生野球は教育の一環であるとか、野球

は人間形成の手段であるということがいわ

れるが、私の場合、ほとんどそんな意識は

ないし、まして自分が教育者だとも思わな

い。どうしたらすべての野球部員がもっと

野球を楽しめるようになるのか、どうした

らもっと強いチームになって、試合に勝ち、

選手と喜びを共にできるのか、ということ

ばかり考えている。


 野球に限らず、およそすべてのスポーツ

は、好きな者同志が集まって、思いきり身

体を動かして楽しむためのもので、それに

よって何の利益も求めないという、極めて

人間的な、文化の一形態である。百メート

ルをどんなに早く走ろうと、ボールをどれ

だけ遠くへカッ飛ばそうと、人間の実生活

には何の役にも立たない。しかし、短距離

走者はたった百分の一秒のタイムを縮める

ために骨身をけずり、野球選手は十回の打

席にたった三本のヒットを打つために若い

エネルギーを燃やす。その理由は、走るこ

とが楽しく、打つことが面白いからにすぎ

ない。さらにいえば、より早く走るための

努力の積み重ねが何物にも替えがたい喜び

であり、より良く打つための苦心と練習そ

のものに、生きがいが感じられるからであ

る。


 このように、スポーツは余暇を楽しみ、

生活を充実させるための手段で、それ以外

には何の目的もないはずである。むしろ目

的のないことがスポーツの特徴であり、試

合に勝つことや良い記録を出すことは、単

なる目標であって終局の目的ではない。


 かつて超人的な猛練習でスピードスケー

の王者といわれ、冬季オリンピックの金

メダルを独占したエリック・ハイデンは「

金メダルは私の人生の目的ではない。それ

に至るプロセスの喜びが私の真の目的であ

る」と語ったと伝えられるが、まさにアマ

チュア・スポーツの真髄を表わす名言であ

る。現在のハイデンにとって、オリンピッ

クの金メダルは、若き日の努力の輝かしい

記念碑としての意味しかなく、金メダルの

栄光を自分の生活の糧にしようなどという

気持ちは全くないのではなかろうか。


 勝つことを義務づけられ、勝つことが人

のすべてであると思いつめた暗い表情の

選手たちを見るにつけても、ハイデンのス

ポーツマンらしい明るさが、思い出されて

ならない。


 日本じゅうで三千数百の高校野球チーム

の選手たちが、甲子園を夢見て努力を重ね

ているが、甲子園も決して真の目的ではな

く、単なる目標にすぎない。そう考えなけ

れば、甲子園に出場できない大多数の選手

たちはだれも目的を達することなく、その

努力はすべて無駄になってしまうわけで、

こんな不合理な話はない。甲子園への出場

を口実に数千万円から億単位の募金を集め

て、大会後にその金を利用し、そのために

また選手に勝つことを強要するなど、ある

種の大人たちにとっては甲子園こそ最終の

目的であり、打出の小槌であるようである。


 郷土と母校の栄誉のためにという空疎な

題目が、いかに高校野球を毒しているのか、

まことに寒心に耐えない。スポーツはあく

までも自分の意志で自分自身のためにやる

べきもので、野球は郷土のためや母校のた

めにやるものではない。


 それにしても高校野球の実態の暗さと息

苦しさはどうだ。高校野球は教育であると

多くの関係者は信じて疑わないが、はたし

てそうであろうか。確かにいろいろな教育

的効果が認められるし、そのこと自体は大

変歓迎すべきことである。しかし高校生の

教育は、何よりもまず学校ですべての生徒

を対象に行なわれるべきもので、野球部で

の生活がそれに代わることはできない。こ

のあたりの自覚のない指導者は、野球の訓

練がそのまま教育であると思い込み、自ら

を教育者であると錯覚する。こうして野球

部の部活動が絶対至上のものとなり、選手

にはすべてを犠牲にして野球に打ち込むこ

とを強要する。そしてそのことが「野球で

人間を造る」唯一の方法であるという確信

に達するようである。野球で人間を造る

はまた何という思い上がりであろうか。

ッサージを覚えた素人が医者の名を騙る類

で、一種の社会的な罪悪といわざるを得

い。しかも、もともと当人たちの善意に

発するだけに、かえって事が面倒である。

冷静に考えて、もし選手の将来を真剣に思

うなら、少なくとも学業との両立を果たさ

せることは、球の指導者としての最低の

モラルであるはで、この点については、

むしろ大学野球のうに反省すべきことが

多いようである。


 こうして教育という錦の御旗の下に、野

球の形を借りた私刑(リンチ)が猛練習と

呼ばれ、前時代的な上下の差別や、礼儀と

は似て非なる虚礼がしつけと称して横行す

るのである。異様な坊主頭がなぜ純真さの

印なのか。なぜ下級生は不作法な大声を張

り上げて上級生に挨拶を繰り返さなければ

ならないのか。教室の出入りにお辞儀をし

たこともない生徒が、なぜグラウンドにお

辞儀をするのか。甲子園で敗れたチームが、

なぜグラウンドの土を取るのか。しかも、

泣きながら公共物である土を取る姿を観衆

やテレビカメラに晒して恥じない。「勝者

は敗者を思いやり、敗者は者を讃える」

というスポーツの爽やかさは、こへ行っ

てしまったのだろうか。


 最後には、どうしても高野連(日本高校

野球連盟)の指導方針に触れざるを得ない。

ここでも高校野球は教育であるという認識

に根強く支配されている。野球部の生活に、

ある種の教育的効果がある点は認めるとし

ても、何かといえばチームに課せられる出

場停止の罰則は、いったい何のためなのか。

一方で勝つための強引な選手集めや非常識

な募金など、高校野球の本質を歪めるよう

な事態はほとんど不問のまま、重箱の隅を

つつくような処罰、それも時代錯誤も甚だ

しい連帯責任型の処分が通例となっている。

野球が教育であると信ずるなら、なぜ罪も

ない多くの選手たちまで長い期間野球がで

きない処置をとるのか。これほど非教育的

な処分は他に類を見ない。さらに重大なこ

とは、事件を起こした本人の人権と将来を

どう考えているのかである。事件の多くは、

若者にありがちな小さな不心得であるが、

それが原因でチームが出場停止となった結

果、何よりも本人たちがどれほど深く傷つ

くだろうか。せっかく新聞が少年A・Bと

いう形で名前を秘しても、ひとたびチーム

の出場停止が決まれば、本人の周囲の人々

はすべて名前入りでその不祥事をしっかり

と記憶してしまい、決して忘れてはくれな

い。中には郷里を棄て親元を離れて他に生

活の場を求めざるを得ない場合もあるだろ

う。高校野球に対する一般の関心が高けれ

ば高いほど、処分を下す側には、その影響

を深く考える必要があるはずである。


 全国で無数に発生しているはずの小事件

中で、たまたま新聞紙上に出たことが処

分のキッカケになることも不合理で、レギ

ュラーになれなかった選手の父母が、腹い

せに自校の不祥事を新聞に投書する例が多

いなど、高校野球の暗さの元は、案外この

出場停止制度そのものにあるのではなかろ

うか。高野連が最も直接的に教育にかかわ

るのが、出場停止処分という最も非教育的

な形であるという皮肉な結果となっている

ような気がしてならない。


 高野連自体が、一般の生徒の事件はチー

の処分の対象にしないなど、近年全般的

に良識的な方向に向かっていることは確か

であり、歓迎すべきであるが、教育のこと

は最高責任者である校長と、直接指導に当

たる部長の判断を信頼して、無用の口出し

をやめるよう勇断をもって改善のスピード

を早めていただきたい。冗談にもせよ、「

生類憐れみの令」に次ぐ悪法と嘲笑される

制度を根本的に改め、愚にもつかぬ前例に

こだわることをやめ、高校野球の世界が本

来の明るさを取り戻す日の一日も早いこと

を期待するものである。    (1984.1.1)










 小社発行・『北陸の燈』第3号掲載

 第13回「現代の声」講座提言者

 当講座記事NO.6再掲




〈以下参考〉

前田祐吉 - Wikipedia

  社会人野球のENEOS現監督・大久保秀昭さん、
   慶応義塾大学野球部現監督・堀井哲也さんは、
   前田祐吉さんの教え子である。

  水原茂のその後



 関連当講座記事NO.

   86、私の学生生活 -涙で歌った応援歌-

    早稲田大学応援部OB  桐生 和郎

      

     

相馬御風随筆   校歌「都の西北」と私-青空文庫

       この校歌が慶應義塾応援歌『若き血』創作に大きな
         影響を与え、かつ『若き血』がこの随筆にも反響。
       その『若き血』に影響されて『紺碧の空』が創作。
                
    
 交驩エール・若人のエネルギー
 悲運のエース・藤田元司が恐れた地響きする応援

    明大ピンチ・そのとき力いっぱいの励まし
     「わたくし」という言葉づかいに妙味あり


治大学校歌(1920年)
作詩 児玉花外 作曲 山田耕筰
白雲なびく駿河台
眉秀でたる若人が
撞くや時代の暁の鐘
文化の潮みちびきて
遂げし維新の栄になふ
明治その名ぞ吾等が母校
明治その名ぞ吾等が母校
権利自由の揺籃の
歴史は古く今もなほ
強き光に輝けり
独立自治の旗翳し
高き理想の道を行く
我等が健児の意気をば知るや
我等が健児の意気をば知るや
霊峰不二を仰ぎつつ
刻苦研鑽多念なき
我等に燃ゆる希望あり
いでや東亜の一角に
時代の夢を破るべく
正義の鐘を打ちて鳴らさむ
正義の鐘を打ちて鳴らさむ

   明治大学で歌唱指導をする山田耕筰(1930年)




 107、スポーツは文化となりうるか

      敗者、勝者の立派な態度 

  

1964東京五輪柔道.神永昭夫とアントン・ヘーシンク

     



   235、プーチンへの右手の励まし

 ワリエワ世界最高得点演技
 コーチの教えを超える技と実力
  IOCが恐れたワリエワの演技
  北京でさらなる技を見せられる
    越中おわら節のおどりを髣髴させる美事な手のしぐさ
   審査員も点数を付けているのがあほらしくなってくる

 
   Flying For Real Freedom And Peace
    二本刃土俵入り




   257、謎の環状木柱列とジョン・レノンの「音」




   178、世界最高の笑顔 

 228、グッドルーザー



             

   225、”ふるさと金沢”再発見・校歌




  242、春4月

  富山県の小学校校歌をつくった人たち

 

 


 相馬御風直筆の早大校歌石碑
 早大正門入って左にある
 校歌制定90年と御風生誕115年の1997年に建立





  トルストイ『復活』劇中歌
  1914年発表
   作詩 相馬御風・島村抱月 作曲 中山晋平
   あまりの人気に学生への観劇・歌唱禁止令が
  島村抱月   (島根県那賀郡小国村・現浜田市出身)
  松井須磨子(長野県埴科郡清野村・現長野市出身)
     中山晋平(長野県下高井郡新野村・現中野市出身)
    ヨナ抜き音階、晋平節


   1.  カチューシャかわいや わかれのつらさ
   せめて淡雪 とけぬ間と
   神に願いを(ララ)かけましょうか

     2.  カチューシャかわいや わかれのつらさ
   今宵一夜に 降る雪の
     あすは野山の(ララ)路かくせ

   3.  カチューシャかわいや わかれのつらさ
   せめて又逢う それまでは
   同じ姿で(ララ)いてたもれ

   4.  カチューシャかわいや わかれのつらさ
   つらいわかれの 涙のひまに
   風は野を吹く(ララ)日はくれる

   5.  カチューシャかわいや わかれのつらさ
   広い野原を とぼとぼと
   独り出て行く(ララ)明日の旅
   

    糸魚川市、中野市、長野市、浜田市

      主演 田中絹代

      監督 溝口健二 主演 山路ふみ子 翻案 川口松太郎

トルストイ『復活』
(中村白葉訳、河出書房新社、1969年1月)
 

『命あるかぎり贈りたい 山路ふみ子自伝』
   2022.10.23 Number Web




   2022.12.6 サッカーダイジェスト Web
       2022.12.8 ペリシッチ「スペインのようだった」


   

  2022.12.24 Number Web




 2022.12.26 Number Web
      これはいい話だろうか。現在の研究と
  桑田真澄の指導にも言及している。




 2023.1.3 The Digest     
     たしかにおかしい




 2023.1.14 プレジデント




 2023.1.24 Sportiva
     たしかに古い、古すぎる

 


 2023.2.2 富山新聞




 2023.2.5 東洋経済




 2023.4.25 佐藤章さん
  韓国蚕室総合運動場での感動的出来事
     当講座記事NO.299、300から


 

 2023.6.18 Number Web




 2023.6.26 CoCoKARA
      金銭至上主義の表出劇
      ブズコワ、ソリベストルモは、試合続行を
      なぜアピールしなかったのか。




  2023.8.21 現代ビジネス




 2023.8.21 朝日新聞
     前田祐吉さんの「エンジョイベースボール」が
      花開きつつある。




 2023.8.21 デイリースポーツ



  
   
 2023.8.23 スポニチ




 2023.8.23 ハフポスト




 2023.8.24 スポーツ報知




    フェアープレイ精神をわきまえていないにもほどがある。
     自分への批判を泣いて(最初から泣くことに決めている。)
   選手への(まったくありもしない)批判にすりかえたい、
   泣けばいいという姑息で卑怯な幼稚な姿勢、態度である。
   エンジョイベースボールに水を差す井上アナの涙である。      
『感動をありがとう』TBS 23.8.26 井上貴博アナの発言




 2023.8.27 ベースボール・マガジン
   球界一の知将
  
    2023.9.12 スポーツ報知
    投攻走守すべて「技」で勝負のテクニカルベースボール。
   なかでも二遊間は鉄壁。緒方蓮選手はうますぎて神奈川
   大会決勝で塁審の誤審まで招いて甲子園の出場を逸して
   しまった。強力打線を組んでも馬淵監督なら優勝できる。
   中日ドラゴンズは馬淵監督に監督を依頼したほうがいい。




 2023.11.21 佐藤章さん
 恩師の森喜朗元首相への反抗、反逆ではないだろうか。
 電通は政府の準機関、政府御用達、政府筆頭請負業者
 ではないか。現行の随意契約・指名競争入札・一般競
 争入札制度を改め、設計価格・請負価格及び全仕様・
 全単価・工期・納期等の細部までを入札前に発注者で
 ある政府・都道府県ほか公共機関が、事前に公表して
 クジ引きで請負業者を決定することにしたらいかがか。




 



2024.1.29 デイリースポーツ
 スポーツに政治の介入を決して許してはならない
 各競技者個人のスポーツへの思想信条も問われる




2024.2.3 佐藤章さん
文春報道に水を差す新潮報道、でっち上げの可能性。
伊東欠場のアジア杯イラン戦にも影響、日本敗退。
事件の全容が不明なのに、森保一日本代表監督は
なぜ伊東欠場を判断し、ベンチからも外したのか。
同調した実況広告提供企業の器量も併せ問われる。
この件は事実と伊東の女性観を分けて考えるべき。
弁護士も金に相当困っているのではないだろうか。
日本の心を持つ男・田中マルクス闘莉王を監督に。

〈小社推薦図書〉
 駒尺喜美『紫式部のメッセージ』
 (朝日選書、1991)








2024.3.22 時事ドットコム
  実際に賭博をしていたのはだれなのか
  水原一平氏は犠牲になるべきではない
  大谷翔平は記者会見を開くべきである
  この問題は浪花節になるものではない
  ピート・ローズ事件の再来ではないか
  このままでは打席に入るたびに屈辱の
  ブーイングを浴びることになるだろう





2024.3.24 長谷川良品さん





2024.3.26 中日スポーツ、大谷翔平が声明発表
  質疑応答がない。これは記者会見ではない。
  これではブーイングを浴びる。残念である。




2024.3.26 現代ビジネス



問題の本質は大谷の口座から送金されていること。
実質、ブックメーカーに送金したのはだれかが鍵。
大谷翔平の声明に対する大谷元通訳の水原一平氏、
大谷代理人のネズ・バレロ氏、ブックメーカーの
マシュー・ボウヤー氏の見解が重要になってくる。
そもそも大谷のお金の管理はだれがしていたのか。
この事件の真因は、大谷翔平とドジャース球団の
契約内容さらにはドジャース球団の経営方針
異議ある者の仕掛けではなかろうか。(小社見解)







2024.3.29 佐藤章さん
当事者・大谷翔平は呑気にどこ吹く風で大活躍
野球小僧になりきっているがいかがか大丈夫か
オオタニ  マイボーイ
大谷出現を予言した歌




2024.4.12 時事ドットコム
   司法取引なら大谷口座の真の管理者がいるということ。
   即ち大谷口座が資金洗浄に利用されたことを意味する。
   大谷水原がそれらを知っていたかどうかは重要でない。
 水原の現段階は有罪が確定しない限り推定無罪である。
 大谷翔平の大活躍と水原一平の解放を望むものである。
 水原一平に贈る歌
  「ぼくは生きるぞ生きるんだ」




2024.4.15 長谷川良品さん
スポーツ指導者にも耳をかたむけてほしい発言
脳幹?を鍛えたあげくの言動ではないだろうか




当講座記事NO.311、320、338から
2024.5.22 佐藤章さん.
世渡り上手なだけだった政界生活も終焉の時来たる
議員や首長になれてただ嬉しいという人物が多すぎ

当講座記事NO.282から
 前回の統一地方選の一か月ほど前、所用で
福井県に行ったときのことだ。どうしても地
元の市議に尋ねなければならない政治の問題
が生じ、夕方、その市議宅を訪ねた。
 市議は運動着を着て、玄関で運動靴の紐を
掛けているところだった。その間、私は自己
紹介をし、用件を一分間で話すから一分間で
いいから応えていただけないかとお願いした。
 しかし市議は、「これからママさんバレー
に行かなければならないので時間がない」と
言って、そそくさと車に乗り込んでしまった。
 しばらくして私は、市議が向かった地元の
体育館に寄ってみた。市議は、十数人の三、
四十歳くらいの女性たちを相手に、男一人、
老骨に鞭打ち一所懸命トスのボールを上げて
いた。見事な、正確なトスの高さ、方向、角
度、速である。大松博文を髣髴させるその
技量、迫力に市議の悲壮な決意を感じた。
 「平和構築よりバレーボール」、「トスを
上げなければ議員にはなれない」、「票にな
ことしかしないし、できない」。これが今
政治である。市議は八十歳間際の野党の重
鎮である。後日、選挙結果を見ると、市議は
位で当選していた。落選した次点候補者
票差はわずか数十票。厳しい選挙、あや
い状況だったのだ。ベテランの政治家は、
「一票の重み」を熟知していたのである。
 トスを上げるたびに、市議は一票、二票、
三票と必死に数えていたに違いない。決して
楽しい顔や姿ではなかった。市議は、自身の
政治生命をあの執念のトスに賭けていたのだ。
そして、市議であるかぎり大松監督を演じつ
けなければならない。一体なんのために。
                 (当講座編集人)

  電通制作. 日紡貝塚女子バレーボールチームの練習
大松監督(1921年・大正10年生まれ)は、
オリンピックを戦争、対戦相手をイギリス軍、
コートを戦場、ボールを鉄砲玉、選手を兵士
とみなして戦っていたのではないだろうか。
ここにはもはやスポーツという意識はない。
あるいはスポーツの起源に忠実なだけだった
のか。
そして1964年東京五輪女子バレーボールの
あの金メダルは、インパールをはじめとする
あの戦争で亡くなったすべての戦友・日本兵、
生き残った日本人にささげたものだったにち
いない。大松監督には大目標があった
事322の伊藤整と通底するものがある。
捨て身の大技「回転レシーブ」をあみだして
日本中をわかせた勝利の歓喜は、白骨街道
らの生還者・大松監督中の雪辱の感涙とは、
意識のずれがあったのる。はたして今後、
スポーツの起源からその意味を逆転し、価値
あるもの、すなわちスポーツを文化とするこ
とは可能だろうか。    (当講座編集人)
 ハイドロフォイルボード
 2024.5.18 富山湾氷見海岸 前方に劔岳
 撮影   木偶乃坊写楽斎さん



2024.5.29 dメニューニュース、THE ANSAWER



2024.7.10 THE ANSAWER



気骨ある辞退
    私は人間です
    企業の商品ではありません

2024.7.20 日刊スポーツ
  スポーツはスポンサーのためにあるものではない  

2022.10.30 福井新聞、鯖江高校で

「ワタクシも喫煙したことがあるので五輪出場を自ら
 辞退します」と帰国する気骨ある選手はいないのか 
 元五輪選手の橋本聖子や堀井学は一体何をしている
 利権に巣食うボスたちも一掃されなければならない
 選手喫煙の主因は当ボスらの利権体質、責任を取れ


スポーツが何たるものかを弁えないとこのようになる
2024.7.18 佐藤章さん
北海道警も負けじと橋本聖子安倍派参議内偵捜査
検察は森喜朗親分の逮捕もまだあきらめていない



2024.7.29 佐藤章さん
スポーツ選手も芸能人も社会性を持たなくては
政治、権力に利用され蝕まれて終わってしまう
バーベキュー「これでオレの人気も回復だ、ウヒヒヒヒ」
熱海富士「横綱、この人いったいどなたですか」
照ノ富士「実はワシもまったく知らないんだよ」



2024.7.29 当講座記事NO.353
 逆転の捨身技・谷落とし

 葉隠・武士道を覆す号泣、裏返った瞬間童心に還る






2024.8.1 CNN
政治を覆す舞台
申裕斌「ジョンシクさんも笑いなさいよ。嬉しくないの」
李正植「これでも笑っているんですよ。ほんと嬉しくて」
孫頴莎「うぶなおひとだから、試合より緊張してるのね」




2024.8.2 日刊スポーツ




2024.8.3 
   申裕斌  武士道を超える歩み寄り

  柔道、パリJUDOに破れる
  リネール「どうもオレのは柔道じゃないみたいだな」



2024.8.5
  台湾、中国、日本、コロンビア  体操鉄棒4選手 

  中国・張博恒(左)と台湾・唐嘉鴻
 「こんなのもらっちゃったよオレ」
 「よかったらオイラのもあげるよ」
 「そっちのは錆びてるみたいだね」
 「ほんとだ。だったら交換してよ」
 「ならオレのも持ってけよ」




2024.8.7 日刊スポーツ
勇気ある発言




2024.8.8
勝負を決めるあと1点を取るのは至難の技 卓球の深淵

  張本智和選手「このまま死んで楽になりたいです」
  田勢邦史監督「何を寝言いってるんだ早く起きろ」

   ボクシング 金 中国、銀 トルコ、銅 韓国,北朝鮮
   イム・エジ「オンニ、記念に一緒に撮りましょ」
   パン・チョルミ「私こんな舞台に慣れてないわ」
   かつてのマラソン君原健二選手を想い出す表情

      君原選手「何のために走るのか」




2024.8.12 中央日報




2024.8.15 TBS
鹿児島の特攻資料館を見学することは何ら批判される
ことではない。行って見てみることは何の問題もない。
どこにでも行って、見て、学ぶことはできるのである。
問われるのは、資料館の在り方や自分自身の生き方や
特攻隊や戦争をどのように考えたかということである。
また、早田選手の発言を批判・賛同する人がいるなら、
その理由を述べるべきである。そして対話すればよい。
                 (当講座編集人)
映画『月光の夏』(2)知覧特攻平和会館が出てくる

1958年「私は貝になりたい」ダイジェスト

特攻兵の出撃を見送る知覧高等女学校の
生徒たち(1945.4.12・撮影 毎日新聞)
当講座記事NO.182、264から

〈小社推薦図書〉
  (岩波文庫、1995)


   プラトン著『パイドロス』
(藤沢令夫訳、岩波文庫、1967)
 ソクラテスは、本を書かない。
(書いたのは、プラトンである)
   心を開いて通わせて対話する。
   生きた智慧が互いに飛び交う。





2024.8.23 プレジデント



2024.8.23 AFP
ハンギョレ新聞をも感動させた
    
   「の」の字を省いたらどうだろうか 異例のテロップ
   日本では「日本海」、韓国・北朝鮮では「東海」
    「朝鮮東海」と呼べばいいだけの話であるはずだ。
   韓国国歌でも「東海」と歌われているのである。
   まともな三者対話が欠けているだけの話である。
      おそらくテロップを入れる要請を学校側が受容。
    いかなる問題が生じても全て学校側に責任転嫁。




2024.8.27 東スポ
 李正植「オレは裕斌さんから笑えと言われていても、
 笑うのをがまんしてたんだよ。それなのに何が処分
 なんだよ。おかしいよこんな話。銀牌も泣いてるよ。
 彼らと話すなって!  お互いの健闘を讃えあって何が
 悪いんだ。スポーツに政治や国境なんてないんだよ」
 金琴英「嬉しいのに笑うなとはほんと変な話だよね。
 日本の大相撲じゃないのよ。ワタシ、正恩首領にも
 かけあってみるわ。きっと分かってくれるはずだわ。
 だってあの方、国の最高の方なんでしょ。大丈夫よ」




2024.8.30 週刊ベースボール







2024.10.3 朝日新聞
世界のスポーツにとってたいへん残念なニュース
ワリエワの才能を怖れたヨーロッパのスポーツ界
   ワリエワ世界最高演技
 ワリエワに贈る曲
  当講座記事NO.170、177から




2024.11.16 アベマタイムズ
当講座記事NO.270から
2024.6.1 石浦引退相撲で弓取式を披露
















〈小社推薦図書〉

 杉森久英著『黄色のバット』
 (角川書店、1959)
 魚津高校・熊谷高校のモデル校と選手登場







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385. お金から命の時代へⅡ

【2025年3月1日配信】           当講座記事NO.320 の続き                                            来たる時代への提言(最新記事順)        冴え 澄み わたる母音のひびき                                         近藤佳星がうたう世界最高民謡『追分』 .   かもめの啼く音に ふと目をさまし          あれが 蝦夷地の 山かいな                     渋谿をさしてわが行くこの浜に 月夜飽きてむ馬しまし停め 大伴家持(万葉集巻19・4206) 391 冴え澄みわたる母音の響き                                以上の記事は当講座記事NO.393に続く 以下2025.4.1以前の記事 2025.4.1 石破茂首相が記者会見 .     2025.4.1 佐藤章さん、前日の記者会見出席報告 2025.4.1 NHK、中居フジ事件被害女性コメント 2025.3.31 中居正広・フジテレビ事件 佐藤章さん、下記記者会見予定質問報告 第三者委員会調査結果報告記者会見中継 清水賢治・フジテレビ社長記者会見中継 調査報告書全文 記者多くして 中居 山にのぼる さら問いできない縛りでは質疑にならず フジ側は調査報告書を盾に真実を語らず 兵庫県知事と逆パターンの非論理不誠実 幾人寄れば文殊の智慧うかぶ 2025.3.31 木偶乃坊写楽斎さん撮影 湊川沿いの桜満開  氷見市        宇木の千歳桜(あずまひがん) 一本桜 樹齢850年   時  2023.4.4 場所  長野県下高井郡山ノ内町  写真提供 新井信介さん 2025.3.31 中居正広・フジテレビ事件 佐藤章さん、下記記者会見予定質問報告 第三者委員会調査結果報告記者会見中継 清水賢治・フジテレビ社長記者会見中継 調査報告書全文 記者多くして 中居 山にのぼる さら問いできない縛りでは質疑にならず フジ側は調査報告書を盾に真実を語らず 兵庫県知事と逆パターンの非論理不誠実 幾人寄れば文殊の智慧うかぶ 2025.4.1 NHK、中居フジ事件被害女性がコメント 2025.4.1 佐藤章さん、前日の記者会見...

307. 職人の心意気 -「技」の文化 -

 【2023年7月3日配信】   手作りへのいざない    -「技」の文化-     縫い針のひとはりに込める夢  敦賀市 宮岸 かなえ                     てのひらに落ちる雨滴が灯をともす     鹿児島市 井上 治朗                        器(うつわ)  器への思い    九谷焼絵付師  宮保 英明         用という約束の形を提供しながら、その 形の中でどれだけ新鮮な自身の感覚を保ち 得るか、どんな可能性を引き出し得るか、 自身を試す姿勢で器と向かい合いたい。  自意識による変身、習慣のタガをはずし、 本来まったく自由に扱える創作表現への自 意識を、材質としての焼きものにぶつけた い。  盛られる料理に好かれる器。使いよくて 楽しくて、ついつい使ってしまう器。見た 目に静かで、しかし強い存在感を持ち、素 直に語りかけてくる。そんなものを心がけ てつくりたい。 みやぼ ひであき 20歳から絵付けをはじめる。 1950年石川県白山市生まれ。 石川県加賀市日谷(ひのや)在住。 日谷川をはさんで両側に民家と山が並ぶ。 谷間の村・日谷の向こうには人はいない。 宮保家の裏もすでに森である。 仕事をするのにいい場所をさがし歩き、 1984年の夏、白山市から引っ越してきた。 「ときどき熊が顔を出す」と妻の文枝さん。 小社発行・『北陸の燈』第4号より 撮影・八幡スタジオ 当講座記事NO.21、249再掲 当講座記事NO.223、「職」に関する記事から     芭蕉布ムーディー綾番匠くずし 平良 敏子   鋏 川澄 巌  文駒縫(あやこまぬい) 竹内 功   匠  足立区が誇る「現代の名工」    当講座記事NO.269、「世界屈指の技と清ら」から   流し猫壺 河井 寛次郎      「祖父寛次郎を語る」鷺 珠江さん     当講座記事NO.280、「湯の人(4)」から   樹 -卒業制作- 青木 春美     当講座記事NO.22、「織を通して学んだこと」から     絹本著色方便法身尊影  1500年製作    ...

224. 天と地をつなぐ「おわらの風」

【2022年1月22日配信】   大寒           七尾市 石島 瑞枝             雪解けの春風を待つ坂の町               秋風 (2023.9.3)            横浜市 髙祖 路子    夜流しの音色に染まる坂の街                         鏡町地方衆、先人のご苦労をしのびその息吹に応える夜流し .  今町のおわら .      2023.9.3 最終日、西町青年団最終おわらの舞い .                               撮影 木偶乃坊写楽斎さん         〈参考〉                               越中八尾おわら風の盆               「深夜の夜ながし」      日本と日本人が失くしてしまった、  奪 われてしまった温かい心情、 郷愁  --それらを求めて各地から 数多の  見物者 が、 魅入られたかのように、  取りもどす か の ように八尾へ と 足を  運 ぶ の だろうか。  高橋治と石川さゆりの『風の盆恋歌』  の影響が大きいとも八尾ではいわれ  て いる。言葉と 歌の 力のすごさか。  事実、この 歌 の前と後とでは、風の  盆訪問 者 数に圧倒的な差がある。  紅白で、「命を賭けてくつ がえす」  と、着物の 袖 を 強く 握りしめ 揺さぶ  り ながらうた った 「くつがえす」の  一語の中に、日本の 歌手 として歩ん  できた 石川さゆりの、 自 らの心の奥  底にある深い 懐 いをも 包んだ 全 情念  が 込め ら れて い る。  旅人の多くが八尾に滞在してい る中、  わずかのさすがの通だけが、おわら  本来 の良 さ が漂っている深夜の夜流  し の、 後ろ姿を見ている。個性 ある  いで たちもすばらしい。  おわらは見せるものなのか、見られ  るこ とを意識すらせずに心ゆく まで  自ら楽しむものなのか。あるいはま  た、…… …… 高橋治と 石川さゆりは、  諸々のことを考える、見直すための  たいへ ん な「契機」 を 与 えて くれ た  ので ある 。    個人的な所感を...

328. ふるさとなまり

 【2024年1月28日配信】   おばばの言葉                       白山市 番匠 俊行                                私の両親は石川県石川郡美川町(現白山 市)に生まれ育ちました。両親のそれぞれ の両親も同町の生まれ、育ちです。除籍簿 を見ると、私の先祖は全員、明治初期から 同町の住人でした。  私は高校時代まで美川で育ち、そのあと 関東の大学を卒業し、宮城県内で就職し、 現在、郷里の美川で塾教師をしています。  私の祖母は1900年生まれで伝統産業 の美川刺繍をしていました。亡くなるまで 町から一歩も出たことがなく、町の人たち との会話を楽しみに生きていたようです。  その会話を耳にした一端をご紹介します。  美川町は手取川の河口の町で日本海に面 しています。作家の島田清次郎、詩人の邑 井武雄、政治家の奥田敬和、歌手の浅川マ キ、五輪トランポリン選手の中田大輔らの 出身地でもあります。  「美川弁」といってもいい言葉は、隣町 の能美郡根上町(現能美市)や能美郡川北 村(現能美郡川北町)、石川郡松任町(旧 松任市、現白山市)ともちょっと異なって いると思います。  私は金沢市内の高校に通ったのですが、 私の話す言葉がおかしいと、いつも友人に 笑われていました。言葉だけで伝えるのは 難しいのですが、動詞、形容詞、形容動詞 のエ音便がイ音便になったり、また、人名 や名詞の発音のアクセントや抑揚、強弱、 長短が独特みたいです。  鹿児島弁が混じっているのではないかと 言う人もいます。もしそうであれば、最初 の石川県庁が美川町に置かれたことと関係 しているのかもしれません。内田政風とい う薩摩藩士がトップとなりはるばるこの町 にやって来たと聞いています。ひょうきん な美川の人たちが薩摩から来た役人たちの 言葉をおもしろがって真似して、流行らせ、 それがそのまま一部根づいたのではないか と思ったりもしています。  内田はなぜか金沢県とすることを拒否し、 県名を石川郡から拝借して石川県にし、さ らに「美川県」にとまで県名をかえようと したと聞きます。石川県はあわや美川県に なっていた可能性もあったということです。  これはこれでおもしろい話ですが、内田 は、美川町を中心にした金沢以上の新たな ...

365. 瓊音(ぬなと)のひびき

 【2024年10月5日配信】 白山に秘められた日本建国の真実      追悼          長野県 中野市  文明アナリスト   新井  信介        共振する縄文の心・翡翠の 波形         -泰澄の白山開山の意味-                                                                               白山は縄文時代からの山として人々の信 仰を集めてきた。六千年前、日本列島では、   お互いの命の響きを正確に伝え合う共振装 置としてヒスイを発見し、大切に身に着け 出した。その信仰の中心に最も響きの分か る女神を選び、ヌナカワ姫と代々呼ばれ続 けた。太古の時代から白山の存在は、北の 日本海と南の太平洋へと流れ行く命の水を 分け恵む特別な水分(みくまり)の山だっ た。そんな日本列島に憧れ入植した人たち から、命を産み育てる力はイザナミと呼ば れ、人々はこの力を、水そのものと同一に 見ていたのだ。                           一方で、国や統治体のことをイザナギと   呼んだ。これらは陰と陽のように表裏を成   し、この二つの力がこれまでの日本国を導   いてきた。しかし令和が始まった今、日本   国というこの統治体は人々の幸福よりも経   済の発展を重視し、マネーの追求に明け暮   れ、その結果多くの問題と疑問と苦痛を人   々にもたらしてきた。そして今、かつて経   験したことがないような、先行きの見えな   い不安が日本人と社会を覆っている。                               さらに今、縄文から続く六千年来の人々   の覚醒が静かに始まった。                                    白山には三つの入口がある。一つは加賀   から入る道で、ここは古代に崇神(すじん) 天皇...

319. 何者でもない者が生きる哲学  

【2023年11月4日配信】         考えることがなぜ大切なのか     小を積めば即ち大と為る. 『報徳記』富田高慶1856    二宮尊徳翁曰く 「励精小さなる事を勤めば大なる事必ずなるべし。  小さなる事をゆるがせにする者、大なる事必ず  できぬものなり」     読書のすすめ 背負い歩き考える二宮金治郎          ロダンの『考える人』よりもりっぱに思える         薪を負いて名定まる         損得から尊徳の世へ             朱買臣 哲学の時代へ(第14回)                                        以下の文はkyouseiさんという方のnote にある文です。偶然みつけ共感するものが ありこれまで何度か勝手にその文を紹介し てきました。どこのどなたかまったく存じ 上げませんが、またお叱りを受けるかもし れませんが、本日掲載の文をご紹介します。 (当講座編集人)            本当の哲学とはなにか            note での投稿も長くなった。 連続投稿 が 370 を超えたようだ。そんなことはどう で もい いことだが、ぼくはこれまで 「哲学」 だと 思って書いていた記事は、「本当に哲 学 な のだろうか」と思うことがよくある。 皆の言う「哲学」は、「○○哲学では…」 と 難しい話をよく知っている。 ぼくはというと、思考を治療的に使って 現 状の維持、回復を狙うものだ。 「何が不満か」「何がそうさせるのか」と いった答えを探すものだ。だから「治療的 哲学」と銘打っているのだが、はたしてそ れは哲学なのだろうかと思うこともある。 ぼくの哲学は「結果が全て」であり、再 現 性も求める。結果が出ないとすれば、や り 方がまずかったとすぐに修正する。自分 自 身を実験台にして確かめるのだ。 難しい話を好まないのは「使えない」 か ら だ。使えないものは真理ではないと 考え て いる。 だからといって、ぼくの視野が広いか とい えばそうではなく、個人という狭い世 界観 をどう変えるかといったものだ。 「大したことないな」と思われるだろう が、 では、...

280. 湯の人(その4)現実と夢

 【2022年11月22日配信】   大きな便り                       加藤 蒼汰          秋とはいっても冬のような寒い夜だった。 浴室にはだれもおらず、脱衣場には番台に 座っている銭湯の主人と私ともうひとり。  その人は銭湯の近所の人であり、かつて 高校の教員をしていた。在職当時、馳浩・ 現石川県知事を教えていたと語っている。 八十歳を超えている。  この銭湯でよく顔を合わせ、会うたびに 知事の高校在学中のエピソードを繰り返す ので、私はその話の内容をすっかり諳んじ られるようになってしまった。高校入学時 から卒業までの様子、レスリング部での活 躍などであるが、私が特に感銘を受けた話 は、知事は高校時代、冬、雪が降り積もっ た朝には真っ先に早出登校して、生徒・教 職員を思いやり、校門から校舎玄関入り口 までの路をひとりスコップで雪かきをして いたというくだりである。  そんなすばらしい教え子をもつ元先生が、 服を脱ぎ裸になって浴室入り口に向かって 五、六歩あるきながら大便を三個落とした のである。気づかずに落ちたようなので、 私は「先生、落としもの」と声をかけると、 「ありりー、まったく気いつかんかった。 あはははは」と笑うのである。  私は、脇にあったチリトリでこの塊をす くいとり、「みごとな色と固さやね」と言 いながらトイレに流した。しかしながら、 脱衣場にはその匂いが全面に沁みわたり、 息が苦しくなるほどだった。このとき私は、 幼いころサーカスを見たときのことを思い だした。  それは曲芸をしていた象が巨大な大便の 塊を三個落とし、団員があわててスコップ で拾いあげていた光景であった。このとき の衝撃の記憶がよみがえり、私にとっさに チリトリを思いつかせたような気がする。 本を読んでいた番台の主人もその匂いで事 のいきさつに気づき、「匂いもすばらしい ね」と笑いながら脱衣場の窓を全開し床を 雑巾でふいてくれたが、その強力な匂いは 容易に消えなかった。  その間、先生は先に浴槽へ入り、気持ち よさそうに浸かっていた。私は先生と湯壺 にいっしょに漬かることに一瞬躊躇したが、 免疫機能が高まるまたとないチャンスでは ないかとの思いも何ゆえか突然こみあげて きて湯船に同席、お伴したしだいである。 ...

381. 現代の課題と統一協会(続き)

 【2025年2月26日配信】        親友ヨッチにささげる手記          -最期まで友情を信じて-                  石川県河北郡津幡町                 書店員 22歳  酒井 由記子  人は、どんな人と巡り合うか、どんな本 と出会うかによって人生が決まってくると、 ある作家が述べていたのをふと思い出す。 私にとってはまさにそうであった。出会っ た人達も書物もとても大きな影響を残し、 忘れられない出来事となっていったのであ る。   一、高校生の頃  今から六年前(1977年)、私は金沢 二水高校の二年生であった。いや二年生と いうより吹奏楽部生というほうが適切であ るほど私は部活動に情熱を注ぎ込んでいた。 みんなでマラソン、腹筋運動をしてからだ を鍛えあげ、各パートごとでロングトーン をして基礎固めをなして、全員そろって校 舎中いっぱいに響きわたるハーモニーを歌 いあげる。それは、先輩、後輩、仲間達の 一致によって一つの音楽をつくり出すとい う喜びを存分に味わった私の青春時代の真 っ盛りであった。ただ残念なことは、部活 動に熱中すればするほど勉強のほうはさっ ぱり力がはいらなかったことである。中学 生のときは、「進学校にはいるために」と いうただそれだけの目的で受験勉強ができ た。しかし、いざ高校にはいってみると、 また「いい大学にはいるために」と先生方 が口をすっぱくして押しまくる文句に素直 になれなかった。勉強する本当の意味が見 出せなかったのである。その頃から、私は 人間は何のために生きるのだろうかという ことまで突っ込んで考えるようになってい った。  父母が書店を経営しているため本は充分 にあり、書物を読むことによって答えを見 出そうとした。私の強い求めに応じるかの ように一冊の本が転がり込んできた。クリ スチャン作家である三浦綾子さんの『あさ っての風』という随筆集であった。聖書の 言葉がそこに登場しており、それはズシリ と心に響いたのである。その本に魅せられ て三浦さんの自叙伝も何冊か読み進めてい った。しだいに私の魂は、人間をはるかに 越えた大いなる存在があることを感じてい った。確信までは至らなかったけれども、 それらの本...

303. 教え子を再び何処へ送るのか

【2023年5月25日配信】   マスクをめぐる学校との苦闘                   千葉県 今野 ゆうひ  17歳                          2019年。新型コロナウイルスが突如 として私たちの生活に現れました。何もわ からないまま政府に舵をゆだね、ウイルス の災いとして ”コロナ禍” は四年目に突入し ました。 当時中学三年生だった私の日常も  “コロナ禍” によって一変しました。  外出自粛、一斉休校、ソーシャルディス タンス、マスク、消毒...   それら政策を半ば面白がりながら、20 21年まで三年間、流されて過ごしました。  人との接触をなるべく避けながらいかに 楽しめるか。マスクをしていかにおしゃれ をできるか。いつしか私たちの生活は“コロ ナ禍”ファーストへと姿を変えていました。  2021年、高校一年生になった私も“コ ロナ禍”ファーストな高校生活を送っていま した。  その年の夏、母と私は新型コロナと全く 同じ症状を発症。病院に行っても薬がない ので PCR検査などはしていませんが、あの 症状は確実に新型コロナだったと思います。 その時母と、“コロナ禍” ファーストな生活 をしていても感染はするし、普通の風邪と 同じように治るということに気づきました。  もちろん個人差はありますが、なぜここ まで徹底して感染源を特定したり外出制限 をしたりするのか、その時からじんわりと 疑問が生まれます。  経験は人を変化させますね。  そんなこんなで私と母は、自転車に乗っ ている時だけ。から始まり、すこしずつマ スクを外すことにしました。  ある日、母と一緒に近くの大きめのスー パーで買い物をすることになります。 「注意されるまでマスクしないで入ってみ るわ」  正直遊びの部分もありました。ちょっと 面倒くさくなっちゃったのです。強い意志 もないただのチャレンジだったので、何か 言われたらすぐ付けるつもりでした。  ところが、なんかいけちゃったのです。 一時間弱いたものの、誰にもなんにも言わ れず買い物終了。  なんということでしょう。今までやって きたことはなんだったんだと思うほどあっ けなくチャレンジは成功。今思えば、この スーパーで何か言われていたら、この文を 書くこともなかったで...
         柿岡 時正
         廣田 克昭
         酒井 與郎
         黒沢  靖
         神尾 和子
         前田 祐吉
         廣田 克昭
         伊藤 正孝
         柿岡 時正
         広瀬 心二郎
         七尾 政治
         辰巳 国雄
         大山 文人
         島田 清次郎
         鶴   彬
         西山 誠一
         荒木田 岳
         加納 韻泉
         沢田 喜誠
         島谷 吾六
         宮保 英明
         青木 晴美
         山本 智美
         匂  咲子
         浅井 恒子
         浜田 弥生
         遠田 千鶴子
         米谷 艶子
         大矢場 雅楽子
         舘田 信子
         酒井 由記子
         酒井 由記子
         竹内 緋紗子
         幸村  明
         梅  時雄
         家永 三郎
         下村 利明
         廣田 克昭
         早津 美寿々
         木村 美津子
         酒匂 浩三
         永原 百合子
         竹津 清樹
         階戸 陽太
         山本 孝志
         谷口 留美
         早津 美寿々
         坂井 耕吉
         伊佐田 哲朗
         舘田 志保
         中田 美保
         北崎 誠一
         森  鈴井
         正見  巖
         正見  巖
         貝野  亨
         竹内 緋紗子
         滋野 真祐美
         佐伯 正博
         広瀬 心二郎
         西野 雅治
         竹内 緋紗子
         早津 美寿々
         御堂河内 四市
         酒井 與郎
         石崎 光春
         小林 ときお
         小川 文人
         広瀬 心二郎
         波佐場 義隆
         石黒 優香里
         沖崎 信繁
         山浦  元
         船橋 夕有子
         米谷 艶子
       ジョアキン・モンテイロ
         遠藤  一
         谷野 あづさ
         梅田 喜代美
         小林 ときお
         中島 孝男
         中村 秀人
         竹内 緋紗子
         笠尾  実
         前田 佐智子
         桐生 和郎
         伊勢谷 業
         伊勢谷 功
         中川 清基
         北出  晃
         北出  晃
         広瀬 心二郎
         石黒 優香里
         濱田 愛莉
         伊勢谷 功
         伊勢谷 功
         加納 実紀代
         細山田 三精
         杉浦 麻有子
         半田 ひとみ
         早津 美寿々
         広瀬 心二郎
         石黒 優香里
         若林 忠司
         若林 忠司
         橋本 美濃里
         田代 真理子
         花水 真希
         村田 啓子
         滋野 弘美
         若林 忠司
         吉本 行光
         早津 美寿々
         竹内 緋紗子
         市来 信夫
         西田 瑤子
         西田 瑤子
         高木 智子
         金森 燁子
         坂本 淑絵
         小見山 薫子
         広瀬 心二郎
         横井 瑠璃子
         野川 信治朗
         黒谷 幸子
         福永 和恵
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         秋山 郁美
         加藤 蒼汰
         森本 比奈子
         森本 比奈子
         吉村 三七治
         石崎 光春
         前田 佐智子
         前田 佐智子
         前田 佐智子
         前田 佐智子
         中野 喜佐雄
         八木  正
         堀  勇蔵
         家永 三郎
         広瀬 心二郎
         菅野 千鶴子
         海野 啓子
         菅野 千鶴子
         海野 啓子
         石井 洋三
         小島 孝一
         キャリー・マディ
         谷本 誠一
         宇部  功
         竹内 緋紗子
         谷本 誠一
         酒井 伸雄
163、コロナ禍の医療現場リポート
         竹口 昌志
164、この世とコロナと生き方を問う
         小社発信記事
165、コロナの風向きを変える取材
         橋本 美濃里
166、英断の新聞意見広告
         小社発信記事
167、ワクチン接種をしてしまった方へ
         小社発信記事
168、真実と反骨の質問
         小社発信記事
169、世論を逆転する記者会見
         小社発信記事
170、世界に響けこの音この歌この踊り
         小社発信記事
171、命の責任はだれにあるのか
         小社発信記事
172、歌人・芦田高子を偲ぶ(1)
         若林 忠司
173、歌人・芦田高子を偲ぶ(2)
         若林 忠司
174、歌人・芦田高子を偲ぶ(3)
         若林 忠司
175、ノーマスク学校生活宣言
         こいわし広島
176、白山に秘められた日本建国の真実
         新井 信介
177、G線上のアリア
         石黒 優香里
178、世界最高の笑顔
         小社発信記事
179、不戦の誓い(2)
         酒井 與郎
180、不戦の誓い(3)
         酒井 與郎
181、不戦の誓い(4)
         酒井 與郎
182、まだ軍服を着せますか?
         小社発信記事
183、現代時事川柳(六)
         早津 美寿々
184、翡翠の里・高志の海原
         永井 則子
185、命のおくりもの
         竹津 美綺 
186、魔法の喫茶店
         小川 文人 
187、市民メディアの役割を考える
         馬場 禎子 
188、当季雑詠
         表 古主衣 
189、「緑」に因んで
         吉村 三七治 
190、「鶴彬」特別授業感想文
         小社発信記事
191、「社会の木鐸」を失った記事
         小社発信記事
192、朝露(아침이슬)
         坂本 淑絵
193、変わりつつある世論
         小社発信記事
194、ミニコミ紙「ローカル列車」
         赤井 武治
195、コロナの本当の本質を問う①
         矢田 嘉伸
196、秋
         鈴木 きく
197、コロナの本当の本質を問う②
         矢田 嘉伸
198、人間ロボットからの解放
         清水 世織
199、コロナの本当の本質を問う③
         矢田 嘉伸
200、蟹
         加納 韻泉
201、雨降る永東橋
         坂本 淑絵
202、総選挙をふりかえって
         岩井 奏太
203、ファイザーの論理
         小社発信記事
204、コロナの本当の本質を問う④
         矢田 嘉伸
205、湯の人(その2)
         加藤 蒼汰
206、コロナの本当の本質を問う⑤
         矢田 嘉伸
207、哲学の時代へ(第1回)
         小社発信記事
208、哲学の時代へ(第2回)
         小川 文人
209、コロナの本当の本質を問う⑥
         矢田 嘉伸
210、読者・投稿者の方々へお願い
         小社発信記事
211、哲学の時代へ(第3回)
         小社発信記事
212、哲学の時代へ(第4回)
         小社発信記事
213、小説『金澤夜景』(2)
         広瀬 心二郎
214、小説『金澤夜景』(3)
         広瀬 心二郎