299. 当講座記事の紹介と記事の開き方

【2023年3月21日配信】小社発信記事  2023.3.20 終止符と大逆転への歴史的布石                    (当講座記事NO.235、261、292から)                            235 兵戈無用への道程 261 知られざる歴史「海に消えた布引丸」 292 春のかおり  「樹」-卒業制作-   青木晴美  ( 当講座記事NO.22から) 22 「樹」 「現代の声」講座記事項目 NO. 223、「職」に関する記事 226、「哲学」に関する記事 227、「コロナ」に関する記事 228、「スポーツ」に関する記事 229、「自然」に関する記…

298. あの日のこと

【2023年3月11日配信】                           春の朝変わらぬ願い十二年                            気仙沼市 菅原 千鶴子                             〈参考〉  あの日の願い   菅野 綾乃     あの日、私は中学一年生だった。  あの夜、私は学校で過ごした。    家に帰れなかった。  両親、祖父母、妹、  伯父さん、叔母さんたちは無事だろうか。  みんな私のことを心配しているだろう。  いっしょにいる友だちも  みんな同じ思いだろう。  結果の悲劇は今も語りたくない。  学校が恐ろし…

297. あの日のこと

【2023年3月10日配信】                           春の陽に父母への偲ひほほ伝ふ                          東京都 山岡 志津              〈参考〉 当講座記事NO.170、293から                                     下町の心と誇り                                映画『下町』  主演・磯村みどり (1963年)  都はるみ『ゆうがおの丘』 (1969年)                                       磯…

296. 読者の方々へお願い

【2023年3月9日配信】小社発信記事                    コロナ騒動のなかこの二年間、ご縁のある方 々にコロナ ワクチ ン成分 の危険性を訴え、 当講 座  NO.289  ほ かの 記事を 見ていただき その接種 等 について 考え て ほしい 旨 お便りしています。  また同時に、小社創案の私設図書館(仮称・ 「現代 の声」図書館)の設立も提起しています。 この図書館に学習室も備えて、これまで118 回 提言者を会場へ直接招いて毎月1回行なってき た「現代 の声」 講座 を、この学習室で再開した いと考え ています。  かつ、提 言 者による定期の連続講座・ 学習会 や講演会も開きたいと考えています…

295. 哲学の時代へ(第12回)

【2023年3月7日配信】  人間の幸福                                七尾市 農家 八十一歳                             坂井 耕吉        政治家たちも学者たちも毎日ご多忙のこ とと思う。しかし、私は、ぜひ、お尋ねし たいことがある。  それは、「人間において一番大切なこと は何であるか」である。  それは、自分だけでなく、自分を含めた 全人間の幸福であると私は思うのである。  だから、政治も経済もその外すべての物 事はみな、全人間の幸福のためにのみ運営 すべきであると思うのである。  故に、全人間は、今からで…

294. おんな川にかかる橋

【2023年3月3日配信】          『小原修作品集』作成にあたり           金沢市 小原 基子                 人間八十年の時代、第二の人生、人によ っては第三の人生が話題になってきており ます。夫、小原修(修さん)は、農林省、 石川県で農業技師、技官としての職業人生 を定年で卒業し、五十八歳からは、好きな 写真を開始し、以来、四半世紀を超える第 二の人生をカメラと共に見事なまでに楽し んできました。  自動車免許を持たない修さんの機動力は、 もっぱら自転車で、重いカメラバックを荷 台にくくりつけ、住居の近くの浅野川(女 川)、東山界隈、卯辰…

人気の記事(過去30日)

272. 「命」の新文化創造の世へ

【2022年10月4日配信】        題字 井上碧山さん (北九州市)         絵  本多千鶴子さん(金沢錦丘高校1年) 学級通信「あいこでしょ」の願い                       小松市立稚松小学校              教諭 辰巳 国雄                      学級文集とか、学級通信とか、学級機関 紙 といわれるもの を発行することを、教師 の仕 事の軸の一つに して実践を積み重ねて いる人 がずい分多いと 思う。  私は、学級通信(学級文集・学級機関紙 も 含めて)を発行してから、もう三十年近 くに なる。あるときは季刊であったり、月 間であ ったり、週刊であったり、日刊であ ったり、 その形はさまざまである。その一 年、一年で 形も異なり、内容も変わってき ている。大ざ っぱな言い方をすれば次のよ うになるだろう。  子どもたちの生活のなかみや、思いや考 え を、本音のところで知りたい。それは、 話す ということででもできるかも知れない が、数 十人の学級の子どもたち全員の本音 を知るこ とはむずかしい。話すことの不得 手な子でも 書くことによって本音を語って くれるだろう。 また書くことによって、さ らに、自分の生活 や、思いや考えを、見つ め直すことになり、 印刷されたものを通し て、学級のみんなの共 通の認識を得られる だろう。共通の認識を持 った学級集団(子 どもたち)は、それをステ ップに、学級集 団の文化を創り上げていく力 にするだろう。  これが、私の教育の大きな柱だった。こ う して始めた学級通信発行の仕事は、子ど もた ちの全面発達を願う私の教育実践のそ のとき そのときの証しともなるものになっ た。学級 通信が発行できなくなるというこ とは、私と 子どもたちとの歩みが止まるこ とである。た だ子どもたちの作文や詩を書 いていくだけで はなく、教師としての自分 と子どもたちとの かかわりや、私の思想を も反映させた学級の 歩みを学級通信の中に 定着させていくことだ った。それは、一時 間一時間の授業を最高に 充実させるという きびしい仕事に支えられて のみ続けられる 仕事ということであった。日 刊の学級通信 は、こんな一つの証しであると 思った。  今年の学級機関紙「あいこでしょ」は、 不

294. おんな川にかかる橋

 【2023年3月3日配信】          『小原修作品集』作成にあたり           金沢市 小原 基子                 人間八十年の時代、第二の人生、人によ っては第三の人生が話題になってきており ます。夫、小原修(修さん)は、農林省、 石川県で農業技師、技官としての職業人生 を定年で卒業し、五十八歳からは、好きな 写真を開始し、以来、四半世紀を超える第 二の人生をカメラと共に見事なまでに楽し んできました。  自動車免許を持たない修さんの機動力は、 もっぱら自転車で、重いカメラバックを荷 台にくくりつけ、住居の近くの浅野川(女 川)、東山界隈、卯辰山そして時には繁華 街の香林坊などを歩き回り、少年時代から の思い出多い金沢の町並みを切り取り、一 瞬の出会いを写し取ってきたのです。また、 カメラ雑誌や旅の案内で気になる風景に出 会うと、必ず撮影旅行を企て、自らの手に よる旅程の下で日本の四季と風土をカメラ と共に訪ね歩きました。  こうして三十年近くを写真三昧で過ごし てきましたが、2004年夏、足に激痛が走る ようになり、右大腿骨の手術を受けました。 残念ながら回復は思わしくなく、以来闘病 生活にはいり、趣味の写真も叶わなくなり ました。  かねてより、「写真集をしてみたら」と 話してきましたが、シャイな性格から固辞 しつづけておりました。今回、病気と闘う 励みになればと考え、これまでの写真帳か らコンテストに出品、入賞したものなどを 取り出し、修さんの了解の下に作品集を作 ることにしました。  こよなく金沢を愛した夫、修さんの目を 通して見た金沢の記録として、修さんの最 初で最後の作品集を作成しました。お目に 留めていただければ幸いに存じます。  『小原修作品集 -金沢を記録する-』から  浅野川 常盤橋 医王山    友禅流し    中の橋から 浅野川大橋を描く人々        梅雨の季節 梅ノ橋    とうろう流し 天神橋    女川に雪ぐ 主計町 一文橋    雪の日 梅ノ橋    仲よし 中の橋(一文橋)    春近し 天神橋近く 常盤橋  〈参考〉      天保年間の浅野川大橋、中の橋、小橋     市民が見つけた金沢再発見    金沢市立小将町中学校校歌   犀星直筆校歌原稿     当講座記事NO.225  ”ふる

235. 「兵戈無用」への道程

【2022年2月17日配信】 プーチンへの 右手の励まし                         ワリエワ問題・負けて勝つ逆転の超美技                     越前市 朝倉 陽子        自由と 平和への歴史的飛翔   Flying For Real Freedom And  Peace                                                                                                                        兵戈無用へ向けて                  ロシア民謡 「鶴」        歌 東 亜樹          鶴 (Журавли) 日本語字幕     歌  アレクサンドラ・べリコヴァ              Александра Белякова        鶴 - Wikipedia     当講座記事NO.170より   木偶乃坊写楽斎さん撮影   当講座記事NO.284、285から ワリエワの薬物疑惑事細かに報ずれどワクチン成分問わぬ報道 オリンピックを政治と憎しみの場に変質するIOC     スポーツ精神もわきまえぬIOC面々五輪稀有の至宝をも潰さんと 嫉妬深い狭量小バッハへの大バッハの怒り天を衝く 今の世とあるべき世の構図を北京に見る せめて競技者と元競技者だけですればどうか五輪運営 天賦の才ひきだすト ウ トベリーゼをIOC会長に 師を越えるカミラの願い現実に 速さ華麗さ柔らかさに強さもあわせもつ宙へ羽ばたくカミラの舞い 荷が重すぎても実力歴代世界一十五歳ワリエワ史上最高演技   ワリエワの右手の励ましに木陰で胸なでおろすプーチン一滴の落涙     写真 2022.2.18 日刊スポーツ   〈参考〉 読者の方々から以下のご意見がありました。  「 IOCこそ問題  ジャンプ服の違反やドーピングに関して、 服については競技前に検査すればいいだけ の問題であり、ドーピングに関しても大会 前に把握解決しておけばいいだけの問題で ある。大会中にこれらの問題を引き起こす ことは、IOCが自らの非や誤りを検査、 把握解決しようとしない、また、できない IOC自体に重大な問題がある。  五輪、スポーツは

224. 春を招く「おわらの風」

【2022年1月22日配信】         大寒                     七尾市 石島 瑞枝              雪解けの春風を待つ坂の町                           撮影 木偶乃坊写楽斎さん 〈参考〉                                越中八尾おわら風の盆               「福島と西町の深夜のまちながし」             日本と日本人が失くしてしまった、  奪 われてしまった温かい心情、 郷愁  --それらを求めて各地から 数多の  見物者 が、 魅入られたかのように、  取りもどす か の ように八尾へ と 足を  運 ぶ の だろうか。  高橋治と石川さゆりの『風の盆恋歌』  の影響が大きいとも八尾ではいわれ  て いる。言葉と 歌の 力のすごさか。  事実、この 歌 の前と後とでは、風の  盆訪問 者 数に圧倒的な差がある。  紅白で、「命を賭けてくつ がえす」  と、着物の 袖 を 強く 握りしめ 揺さぶ  り ながらうた った 「くつがえす」の  一語の中に、日本の 歌手 として歩ん  できた 石川さゆりの、 自 らの心の奥  底にある深い 懐 いをも 包んだ 全 情念  が 込め ら れて い る。  旅人の多くが八尾に滞在してい る中、  わずかのさすがの通だけが、おわら  本来 の良 さ が漂っている深夜の夜流  し の、 後ろ姿を見ている。個性 ある  いで たちもすばらしい。  おわらは見せるものなのか、見られ  るこ とを意識すらせずに心ゆく まで  自ら楽しむものなのか。あるいはま  た、…… …… 高橋治と 石川さゆりは、  諸々のことを考える、見直すための  たいへ ん な「契機」 を 与 えて くれ た  ので ある 。    個人的な所感を述べれば、おわらは  縄文と江戸の文化が八尾で花開いた  ような気がする。    (編集人)    鏡町の踊りに魅入る観光客 (富山市長一行が特等? 席に.見物席を間違えている)   福島のまちながし   Most beautiful  "Kazenobon " scene   西町のまちながし            https://www.youtube.com/watch? v=

289. コロナ再考・甦る親鸞の他力

 【2023年1月17日配信】小社発信記事                          政治家・谷本誠一呉市議へのエール                                                                           コロナ騒動がおこってから3年がたった。 この間、当講座でも NO.268 の記事などで 谷本誠一さんや大橋眞さんの声をとどけて マスク着用やPCR検査、ワクチン接種、ワ クチン後遺症等について問題点を提起して きたが、残念ながらいまだ未解決のままで ある。  今春の岐阜県議選に出馬するという今井 瑠々氏の今月13日の記者会見を見ると、 会見直前に今井氏の隣に座っていた野田聖 子衆議が記者と、マスクを着けるかどうか やりとりをしていた。マスク着用の有無は 国会議員と大手マスコミ記者のやりとりで 決まるということである。コロナが政治で あることを証明した一場面である。  科学的根拠に基づきコロナ対策をしてい るという国政の一端を担う国会議員の見識 がこのような有り様である。科学的根拠に 基づきコロナ対策の問題点を指摘、危惧す る学者や医師や地方議員の声は国会議員も マスコミ記者も無視し、調べようともしな い。逆に言えば、彼らが全員マスクをはず さない限りコロナは終わらない。  コロナ騒動を推しすすめ関わった方々は 謝罪し責任をとった上すみやかに退出して いただきたいが、コロナが政治であるとい う現実、実態である以上、これ以上コロナ 騒動に巻き込まれないためには最終的には 自身で考え判断し身を守る以外に術はない。 日本には、まだかろうじてこの道が残され ている。  以下に今一度、コロナ騒動に関する小社 の見解と関連記事を掲げます。             (当講座編集人) 厚生労働省の公式見解  PCR陽性は感染性ウイルスの存在 を意味しない。 厚労省は、新型コロナウイルスの 存在を証明する科学的根拠を有し ていない。 (このことを知っていながらも、 このことを国民に知らせる日本の 大手新聞社・放送局、国会議員、 閣僚も、まだ存在しない。)  小社の見解 上記の厚労省の見解は、 ①マスクをする必要はない。 ②PCR検査をする必要はない。 ③ワクチン接種をする必要はない。 ④緊急事態宣言をする必要はない

275. スポーツとは何か・交驩のエール

【2022年10月10日配信】        学生野球考                           慶應義塾大学野球部監督                  前田 祐吉                 「サード!もう一丁!」「ヨーシこい」 と いう元気な掛け声の間に、「カーン」と いう 快いバットの音がひびくグラウンドが 私の職 場である。だれもが真剣に野球に取 り組み、 どの顔もスポーツの喜びに輝いて いる。息子 ほどの年齢の青年たちに囲まれ、 好きな野球 に打ち込むことのできる私は、 つくづく、し あわせ者だと思う。  学生野球は教育の一環であるとか、野球 は人間形成の手段であるということがいわ れるが、私の場合、ほとんどそんな意識は ないし、まして自分が教育者だとも思わな い。どうしたらすべての野球部員がもっと 野球を楽しめるようになるのか、どうした らもっと強いチームになって、試合に勝ち、 選手と喜びを共にできるのか、ということ ばかり考えている。  野球に限らず、およそすべてのスポーツ は、好きな者同志が集まって、思いきり身 体を動かして楽しむためのもので、それに よって何の利益も求めないという、極めて 人間的な、文化の一形態である。百メート ルをどんなに早く走ろうと、ボールをどれ だけ遠くへカッ飛ばそうと、人間の実生活 には何の役にも立たない。しかし、短距離 走者はたった百分の一秒のタイムを縮める ために骨身をけずり、野球選手は十回の打 席にたった三本のヒットを打つために若い エネルギーを燃やす。その理由は、走るこ とが楽しく、打つことが面白いからにすぎ ない。さらにいえば、より早く走るための 努力の積み重ねが何物にも替えがたい喜び であり、より良く打つための苦心と練習そ のものに、生きがいが感じられるからであ る。  このように、スポーツは余暇を楽しみ、 生活を充実させるための手段で、それ以外 には何の目的もないはずである。むしろ目 的のないことがスポーツの特徴であり、試 合に勝つことや良い記録を出すことは、単 なる目標であって終局の目的ではない。  かつて超人的な猛練習でスピードスケー ト の王者といわれ、冬季オリンピックの金 メダルを独占したエリック・ハイデンは「 金メダルは私の人生の目的ではない。それ に至るプロセスの喜びが私の真の目的

281. 貧困なる精神からの解放

【2022年12月2日配信】                           本多勝一 『大江健三郎の人生   -貧困なる精神Ⅹ集-』から                           この問題〈注1〉と深く関連するものと して、大江健三郎氏のノーベル文学賞受賞 記念講演『あいまいな日本の私』(一九九 四年十二月)を取りあげたい。大江氏は、 自分が戦後民主主義者であることを理由に 文化勲章を拒んだ。であるならば、川端康 成の『美しい日本の私』(一九六八年同講 演)に対して、はっきりとした訣別がある と私は考えていた。けれども大江氏は、ア ジアに対する日本の侵略戦争を一応は批判 しているようにみせながらも、この川端と の訣別の態度をほとんどみせなかったので ある。それどころか川端の禅的、天皇制的 な世界観に対して、きわめて「あいまいな (ambiguous=両義的な)」評価を与え、 かつ、「自然」や「森」や「息子・光」と の関係から成立する「言語を超えたもの」 を強調し、さらに、意図的に選んだ人物を 羅列しながら西洋のルネサンスにおける「 ユマニスム」への無批判な賛美にまで至っ ている。  私は大江氏のこの講演のなかで、はっき りと「連続性史観」に基づいた危険な発想 をみているのである。もし大江氏が戦後民 主主義者を自称するならば、少なくとも川 端や三島由紀夫の日本主義的な思想や行動 に対して明確に批判する責任があるはずで あり、そして、その川端、三島への批判の 根拠となりうる新しい哲学や思想を主張す ると私は期待していた。  大江氏の語るルネサンスの「ユマニスム」 は、西洋哲学史において、最も非論理的で 「あいまいな」哲学の系譜を代表するもの であり、自然主義、さらには神秘主義へと 深く関連していくものである。このことは、 すでに過去の歴史によって論証されたこと である。禅や天皇制から「ユマニスム」へ の展開--ということを大江氏が本気で考 えているとすれば、それは、「連続性史観」 に基づいた同じ実体の繰りかえしを意味す るものでしかない。川端、三島を克服でき ない大江氏のこの「あいまいさ(ambigui- ty=両義性)」の内実は、「いいかげんな もの」であり、多くの人を惑わすための新 しい(復古的な)保守反動、体制迎合思想 であると私は考える。   

280. 湯の人(4)現実と夢

 【2022年11月22日配信】            大きな便り                     加藤 蒼汰       秋とはいっても冬のような寒い夜だった。 浴室にはだれもおらず、脱衣場には番台に 座っている銭湯の主人と私ともうひとり。  その人は銭湯の近所の人であり、かつて 高校の教員をしていた。在職当時、馳浩・ 現石川県知事を教えていたと語っている。 八十歳を超えている。  この銭湯でよく顔を合わせ、会うたびに 知事の高校在学中のエピソードを繰り返す ので、私はその話の内容をすっかり諳んじ られるようになってしまった。高校入学時 から卒業までの様子、レスリング部での活 躍などであるが、私が特に感銘を受けた話 は、知事は高校時代、冬、雪が降り積もっ た朝には真っ先に早出登校して、生徒・教 職員を思いやり、校門から校舎玄関入り口 までの路をひとりスコップで雪かきをして いたというくだりである。  そんなすばらしい教え子をもつ元先生が、 服を脱ぎ裸になって浴室入り口に向かって 五、六歩あるきながら大便を三個落とした のである。気づかずに落ちたようなので、 私は「先生、落としもの」と声をかけると、 「ありりー、まったく気いつかんかった。 あはははは」と笑うのである。  私は、脇にあったチリトリでこの塊をす くいとり、「みごとな色と固さやね」と言 いながらトイレに流した。しかしながら、 脱衣場にはその匂いが全面に沁みわたり、 息が苦しくなるほどだった。このとき私は、 幼いころサーカスを見たときのことを思い だした。  それは曲芸をしていた象が巨大な大便の 塊を数個落とし、団員があわててスコップ で拾いあげていた光景であった。このとき の衝撃の記憶がよみがえり、私にとっさに チリトリを思いつかせたような気がする。 本を読んでいた番台の主人もその匂いで事 のいきさつに気づき、「匂いもすばらしい ね」と笑いながら脱衣場の窓を全開し床を 雑巾でふいてくれたが、その強力な匂いは 容易に消えなかった。  その間、先生は先に浴槽へ入り、気持ち よさそうに浸かっていた。私は先生と湯壺 にいっしょに漬かることに一瞬躊躇したが、 免疫機能が高まるまたとないチャンスでは ないかとの思いも何ゆえか突然こみあげて きて、湯船にお伴したしだいである。  「よくあることなんけ」と湯中、思

283. シンデレラ(灰かぶり)からの便り

【2022年12月12日配信】           メルヘンの世界の光と影                小金井市 大山 文人                昨年の夏グリムのメルヘンを読む機会が あった。(ヨーロッパの人々がメルヘンと 聞くとすぐに念頭に浮かぶのはグリムのメ ルヘンだそうである。)  ドイツ語版(Kraus Reprint 1980)全三 巻、岩波文庫本で全五冊からなる大部なも ので、通読するのに一苦労した。しかも、 ドイツ語版の方はドイツ文字で印刷されて いるのである。その上ドイツの方言で書か れたものがときおり出てきて、ドイツ人に 問いあわせてもなかなかわからないという 難所にぶつかったりすると、まるで暗号文 字を解読しているかのような心境になるの であった。  次に記すのはそのような悪戦苦闘の中か らの報告である。         メルヘンの世界というと、私たちはすぐ 夢のような楽しいできごとにみちあふれた ばら色の世界を連想するかもしれない。た とえばヘンゼルとグレーテルが森の中で見 つけた、パンや卵やきのお菓子や白砂糖で できた家のような世界を。  しかし、ヘンゼルとグレーテルは、実は、 口べらしの ために両親によって森の中に置 き 去りにされたのであることを思いおこす ことができるならば、メルヘンのようなば ら色の世界には、きびしい現実もまた影を おとしているのに気がつくことだろう。  夜のしんしんとふけたころ、「子共たち を森に捨ててこよう」と最初に提案するの は母親の方である。父親は、「そりゃあ、 かわいそうだ」と言って反対しようとする のだが、ついには押し切られてしまう。こ の母親は実はまま母であった。このような わけでヘンゼルとグレーテルが森に捨てら れたあと、お菓子の家の中で、魔法つかい のおばあさんに殺されそうになりながらも、 その手をのがれてようやく自分たちの家に 帰りつくことができたとき、まま母は二人 をどのようにむかえたのだろう。ふしぎな ことに、まま母はもう亡くなっていたとあ る。  このようにしてまま母が子供をいじめる 話はグリムのメルヘンにおける主要なテー マの一つであり、このテーマにそって有名 なメルヘンが多い。まま父が子供をいじめ る話はほとんどないようである。いじめら れるのは男の子の場合もあれば、女の子の

266. 混迷する現代と統一協会

【2022年8月28日配信】        最期まで友情を信じて ー親友ヨッチに捧げるー                                              石川県河北郡津幡町            書店員 酒井 由記子             人は、どんな人と巡り合うか、どんな本 と出会うかによって人生が決まってくると、 ある作家が述べていたのをふと思い出す。 私にとってはまさにそうであった。出会っ た人達も書物もとても大きな影響を残し、 忘れられない出来事となっていったのであ る。   一、高校生の頃  今から六年前(1977年)、私は金沢 二水高校の二年生であった。いや二年生と いうより吹奏楽部生というほうが適切であ るほど私は部活動に情熱を注ぎ込んでいた。 みんなでマラソン、腹筋運動をしてからだ を鍛えあげ、各パートごとでロングトーン をして基礎固めをなして、全員そろって校 舎中いっぱいに響きわたるハーモニーを歌 いあげる。それは、先輩、後輩、仲間達の 一致によって一つの音楽をつくり出すとい う喜びを存分に味わった私の青春時代の真 っ盛りであった。ただ残念なことは、部活 動に熱中すればするほど勉強のほうはさっ ぱり力がはいらなかったことである。中学 生のときは、「進学校にはいるために」と いうただそれだけの目的で受験勉強ができ た。しかし、いざ高校にはいってみると、 また「いい大学にはいるために」と先生方 が口をすっぱくして押しまくる文句に素直 になれなかった。勉強する本当の意味が見 出せなかったのである。その頃から、私は 人間は何のために生きるのだろうかという ことまで突っ込んで考えるようになってい った。  父母が書店を経営しているため本は充分 にあり、書物を読むことによって答えを見 出そうとした。私の強い求めに応じるかの ように一冊の本が転がり込んできた。クリ スチャン作家である三浦綾子さんの『あさ っての風』という随筆集であった。聖書の 言葉がそこに登場しており、それはズシリ と心に響いたのである。その本に魅せられ て三浦さんの自叙伝も何冊か読み進めてい った。しだいに私の魂は、人間をはるかに 越えた大いなる存在があることを感じてい った。確信までは至らなかったけれども、 それらの本によって金沢のプロテスタント の教会に足を運び
         柿岡 時正
         廣田 克昭
         酒井 與郎
         黒沢  靖
         神尾 和子
         前田 祐吉
         廣田 克昭
         伊藤 正孝
         柿岡 時正
         広瀬 心二郎
         七尾 政治
         辰巳 国雄
         大山 文人
         島田 清次郎
         鶴   彬
         西山 誠一
         荒木田 岳
         加納 韻泉
         沢田 喜誠
         島谷 吾六
         宮保 英明
         青木 晴美
         山本 智美
         匂  咲子
         浅井 恒子
         浜田 弥生
         遠田 千鶴子
         米谷 艶子
         大矢場 雅楽子
         舘田 信子
         酒井 由記子
         酒井 由記子
         竹内 緋紗子
         幸村  明
         梅  時雄
         家永 三郎
         下村 利明
         廣田 克昭
         早津 美寿々
         木村 美津子
         酒匂 浩三
         永原 百合子
         竹津 清樹
         階戸 陽太
         山本 孝志
         谷口 留美
         早津 美寿々
         坂井 耕吉
         伊佐田 哲朗
         舘田 志保
         中田 美保
         北崎 誠一
         森  鈴井
         正見  巖
         正見  巖
         貝野  亨
         竹内 緋紗子
         滋野 真祐美
         佐伯 正博
         広瀬 心二郎
         西野 雅治
         竹内 緋紗子
         早津 美寿々
         御堂河内 四市
         酒井 與郎
         石崎 光春
         小林 ときお
         小川 文人
         広瀬 心二郎
         波佐場 義隆
         石黒 優香里
         沖崎 信繁
         山浦  元
         船橋 夕有子
         米谷 艶子
       ジョアキン・モンテイロ
         遠藤  一
         谷野 あづさ
         梅田 喜代美
         小林 ときお
         中島 孝男
         中村 秀人
         竹内 緋紗子
         笠尾  実
         前田 佐智子
         桐生 和郎
         伊勢谷 業
         伊勢谷 功
         中川 清基
         北出  晃
         北出  晃
         広瀬 心二郎
         石黒 優香里
         濱田 愛莉
         伊勢谷 功
         伊勢谷 功
         加納 実紀代
         細山田 三精
         杉浦 麻有子
         半田 ひとみ
         早津 美寿々
         広瀬 心二郎
         石黒 優香里
         若林 忠司
         若林 忠司
         橋本 美濃里
         田代 真理子
         花水 真希
         村田 啓子
         滋野 弘美
         若林 忠司
         吉本 行光
         早津 美寿々
         竹内 緋紗子
         市来 信夫
         西田 瑤子
         西田 瑤子
         高木 智子
         金森 燁子
         坂本 淑絵
         小見山 薫子
         広瀬 心二郎
         横井 瑠璃子
         野川 信治朗
         黒谷 幸子
         福永 和恵
         小社発信記事
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         秋山 郁美
         加藤 蒼汰
         森本 比奈子
         森本 比奈子
         吉村 三七治
         石崎 光春
         前田 佐智子
         前田 佐智子
         前田 佐智子
         前田 佐智子
         中野 喜佐雄
         八木  正
         堀  勇蔵
         家永 三郎
         広瀬 心二郎
         菅野 千鶴子
         海野 啓子
         菅野 千鶴子
         海野 啓子
         石井 洋三
         小島 孝一
         キャリー・マディ
         谷本 誠一
         宇部  功
         竹内 緋紗子
         谷本 誠一
         酒井 伸雄
163、コロナ禍の医療現場リポート
         竹口 昌志
164、この世とコロナと生き方を問う
         小社発信記事
165、コロナの風向きを変える取材
         橋本 美濃里
166、英断の新聞意見広告
         小社発信記事
167、ワクチン接種をしてしまった方へ
         小社発信記事
168、真実と反骨の質問
         小社発信記事
169、世論を逆転する記者会見
         小社発信記事
170、世界に響けこの音この歌この踊り
         小社発信記事
171、命の責任はだれにあるのか
         小社発信記事
172、歌人・芦田高子を偲ぶ(1)
         若林 忠司
173、歌人・芦田高子を偲ぶ(2)
         若林 忠司
174、歌人・芦田高子を偲ぶ(3)
         若林 忠司
175、ノーマスク学校生活宣言
         こいわし広島
176、白山に秘められた日本建国の真実
         新井 信介
177、G線上のアリア
         石黒 優香里
178、世界最高の笑顔
         小社発信記事
179、不戦の誓い(2)
         酒井 與郎
180、不戦の誓い(3)
         酒井 與郎
181、不戦の誓い(4)
         酒井 與郎
182、まだ軍服を着せますか?
         小社発信記事
183、現代時事川柳(六)
         早津 美寿々
184、翡翠の里・高志の海原
         永井 則子
185、命のおくりもの
         竹津 美綺 
186、魔法の喫茶店
         小川 文人 
187、市民メディアの役割を考える
         馬場 禎子 
188、当季雑詠
         表 古主衣 
189、「緑」に因んで
         吉村 三七治 
190、「鶴彬」特別授業感想文
         小社発信記事
191、「社会の木鐸」を失った記事
         小社発信記事
192、朝露(아침이슬)
         坂本 淑絵
193、変わりつつある世論
         小社発信記事
194、ミニコミ紙「ローカル列車」
         赤井 武治
195、コロナの本当の本質を問う①
         矢田 嘉伸
196、秋
         鈴木 きく
197、コロナの本当の本質を問う②
         矢田 嘉伸
198、人間ロボットからの解放
         清水 世織
199、コロナの本当の本質を問う③
         矢田 嘉伸
200、蟹
         加納 韻泉
201、雨降る永東橋
         坂本 淑絵
202、総選挙をふりかえって
         岩井 奏太
203、ファイザーの論理
         小社発信記事
204、コロナの本当の本質を問う④
         矢田 嘉伸
205、湯の人(その2)
         加藤 蒼汰
206、コロナの本当の本質を問う⑤
         矢田 嘉伸
207、哲学の時代へ(第1回)
         小社発信記事
208、哲学の時代へ(第2回)
         小川 文人
209、コロナの本当の本質を問う⑥
         矢田 嘉伸
210、読者・投稿者の方々へお願い
         小社発信記事
211、哲学の時代へ(第3回)
         小社発信記事
212、哲学の時代へ(第4回)
         小社発信記事
213、小説『金澤夜景』(2)
         広瀬 心二郎
214、小説『金澤夜景』(3)
         広瀬 心二郎