死ぬる為に生きると云うことを
【2020年12月6日 NO.80】
小林 ときお
翳りゆく黄昏には
いつの日も淋しさがある
めぐりゆく季節が
華麗な花を咲かせようと
知らぬ間に散り果て
ひそかに地に還りゆこうと
人それぞれのさまざまな息吹が
今日も疲れた表情を見せる
雑踏に背を向け
帰りゆく背を染める陽が
なんて淋しい色彩なのだろう
微笑を忘れ 言葉を忘れ
立ち尽くす影の群れ
喧騒の中にまぎれ 何かを求めて
今日も虚しく黙々と歩を進める
やがて一つ二つと
街灯が家の灯が点きはじめる
繰り返しにすぎないセレモニー
やすらぎはあるかい
やさしさはあるかい
心から笑えるかい
明日はあるかい
虚勢を張って生きることに疲れないかい
背伸びばかりしていて疲れないかい
生きなければならない目に見えない足枷が
あなたを苦しめ苛めつづけている
振り向くのはつらいけど
思い切りみつめてごらん
過去と云う人生を
そして今 闇の向うに訪れる朝モヤの中
思い切り吸いこめ空気のうまさを
知らないことばかりが多すぎて
忘れていたことを思い起こせ
人は誰もが死ぬる日の為に
時を刻み生きると云うことを
(黄昏にて)
NO.67にも小林ときおさんの作品掲載