飴の民俗(1)

【2021年3月5日配信 NO.142】 



   

            加能民俗の会    

                                             前田 佐智子   


一. 古代の甘味料

 われわれの祖先が、「甘い」という味を、

はじめて知ったのは果実によってであるが、

味だけをとりだして料理にかけたり、まぜ

りするための甘味料の最初は、「蜜蜂」で

った。


 このことは、スペインのバレンシアの、石

器時代の洞窟の壁画に蜜蜂を採集している女

性の姿が画かれていたり、古代エジプト王朝

のピラミッドから、三千年以上も前のものと

考えられる蜜蜂が発見されたことによっても

証明される。


 日本では、古くは蜜蜂のことは「蜜(みち)」

と呼んでいた。『日本書紀』に、皇極天皇の

とき百済からきた太子・余豊によって「蜜蜂

の四封」が、大和三輪山に放たれたが失敗に

おわったことが見られる。


 しかし、平安時代になると、わずかながら

相模・信濃・甲斐・能登・越後・備中・備後

などの国から産出していた。


 この他には「甘葛煎(あまずら)」「色利

(いろり)」ほか人工甘味料として最古のも

のといわれるものがあり、現在もつくられて

いるものとして「飴」があげられる。



 甘葛煎

 『枕草子』に、削氷(けずりひ)にこれを

かけて食べたという条があるが、これは、葛

の茎からとった液汁を煮つめたもので、砂糖

が一般的なものになるまで、庶民の間で用い

られていた。



 色利

 加賀・能登では「味噌あめ」「あめ味噌」

呼び、味噌をつくるとき大豆(味噌豆)を

煮るが、その煮汁をとって、さらにゆっくり

と二日ほど煮つめ、はじめの分量の三分の一

ぐらいになったものが、それが色利なのであ

る。


 一九八二年(昭和五十七年)に出版された

悦子氏の『金沢・加賀・能登 四季の郷

土料に、羽咋郡富来町鵜野屋の二十三代

藤森助左衛門さんの家では、今でも「あめ味

噌」をつくっておられると書かれているが、

能美郡寺井町の人からも、炉辺で、おばあさ

んが「あめ味噌」を煮つめていて、学校から

帰ってくると良い匂いがしていて、せがんで

なめさせてもらったという話を聞かせてもら

ったことがある。



 飴

 『日本書紀』巻第三、神日本磐余彦(かむ

やまといわれびこ)の神武天皇に「天皇、又

因りて祈(うけ)ひて曰わく、吾今當(まさ)

に八十平瓮(やそひらか)を以て、水無しに

飴(たがね)を造らむ。飴成らば、吾必ず鋒

刃(つはもの)の威を假らずして、坐ながら

天下を平けむ。とのたまふ。乃ち飴を造りた

まふ。飴即ち自づからに成りぬ」とある。


 『日本書紀』では、飴のことを「タガネ」

とよませているが、タガネとは、掌と指とで

握り固めるという意味だから、水無しで握り

固めてつくった飴ということになるかもしれ

ない。


 『和名抄』に、「飴、米蘖為之」とある。

金沢の飴屋の老舗「俵屋」の主人、俵外代吉

さんによれば、麦より米のほうが早く日本に

渡来してきたから、はじめは、米と米芽で飴

がつくられていたはずであり、その後、麦が

渡来し、米芽より麦芽のほうが糖化力がすぐ

れているということから、現在のような、米

と麦芽とによる飴がつくられるようになった

のではないかというのである。


 『延喜式』によると「糖(あめ)三斗二升

を得るには糯米一石と萠小麦二斗を用いる」

とある。










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