器(うつわ)への思い
【2020年9月11日配信 NO.21】
九谷焼絵付師 宮保 英明
用という約束の形を提供しながら、その形
の中でどれだけ新鮮な自身の感覚を保ち得る
か、どんな可能性を引き出し得るか、自身を
試す姿勢で器と向かい合いたい。
自意識による変身、習慣のタガをはずし、
本来まったく自由に扱える創作表現への自意
識を、材質としての焼きものにぶつけたい。
盛られる料理に好かれる器。使いよくて楽
しくて、ついつい使ってしまう器。見た目に
静かで、しかし強い存在感を持ち、素直に語
りかけてくる。そんなものを心がけてつくり
たい。
みやぼ ひであき
20歳から絵付けをはじめる。
1950年石川県白山市生まれ。
石川県加賀市日谷(ひのや)在住。
日谷川をはさんで両側に民家と山が並ぶ。
谷間の村・日谷の向こうには人はいない。
宮保家の裏もすでに森である。
仕事をするのにいい場所をさがし歩き、
1984年の夏、白山市から引っ越してきた。
「ときどき熊が顔を出す」と妻の文枝さん。
器
秋
草木は美しく着飾り
秋の光に深みのある表情を作り出す。
しかし何故か俄かにもの寂しくなる。
やがてたしかにやってくる白の世界。
ここ日谷の鳥や獣たちも冬仕たくを
始めていることだろう。
宮保 文枝
小社発行・『北陸の燈』第4号より
写真は八幡スタジオ撮影