哲学の時代へ(第2回)
【2021年12月3日配信 NO.208】
哲学の歌
小川 文人
2008年はリーマンショックを引き起
こしたアメリカ発の金融工学の悪影響とか
で、日本の経済界も混乱し、高校や大学の
卒業生諸君は就職活動に苦労していたよう
です。
2020年+2021年はコロナショッ
クにより、パンデミックが引き起こされ、
飲食業や旅行業等の方々が迷惑をこうむり、
世界が大混乱しました。
さて2022年はどうなるでしょうか。
石川県が生んだ偉大な哲学者・西田幾多
郎は、海を見ていると、けっして見飽きる
ことがなかったそうです。「何か無限なも
のが動いているように思う」と言って。
この世界の荒海をどうやってこぎ渡って
いけばよいでしょうか。
皆様の航海の無事を祈りつつ、西田の歌
を二首、引用します。
天地(あめつち)の 別れし 時ゆ
よどみなく ゆらぐ
海原 見れど 飽かぬかも
打ちわたす 大海原に 夕日入り
漕ぎ行く船は
見るに さやけし
僕の実家のある黒部市からははるかに
北アルプスの青い山脈を仰ぐことができ
ます。
富山県には北アルプスの雪解け水が流
れ下る川が多く、七大河川が数えられま
す。黒部川、そして早月川などが流れて
います。
昔の川は増水し氾濫するたびに川筋を
変えるため、思いもよらぬところに「古
黒部」などの地名を残しています。
奈良時代に越中の守に任じられた大伴
家持がその任期中、もっとも僕の郷里に
近づいたのはたぶんこの歌のときでしょ
う。
立山(たちやま)の雪し消(く)
らしも延槻(はひつき=早月)の
川の渡瀬(わたりぜ)鐙(あぶみ)
浸(つ)かすも
『万葉集』巻第十七
(立山の雪が消えていくらしい。
早月川の渡り瀬で、馬の鐙が水に
つかっている。)
西日さす富山湾の夕暮れ
立山を詠んだ歌 - たのしい万葉集
高岡市万葉歴史館 家持が来た越の国
〈以下参考〉
深田久弥は『日本百名山』のなかで、
万葉集にある立山は今の劒岳ではな
いかと述べている。
当講座 NO.68 と NO.186 の記事にも
小川文人さんの文章があります。
また、作田幸以智さん撮影の写真が、
当講座記事のNO.172-174とNO.176、
184、216、218にもあります。
西田幾多郎 - Wikipedia
〈後記〉
西田幾多郎をはじめとする京都学派や
鈴木大拙、ルーベン・アビト氏、大江
健三郎氏の思想を批判した著書に『日
本的霊性からの解放』(ジョアキン・
モンテイロ著、小社発行、1995年) が
あります。
後日、この箇所を当講座に掲載します。
また、同書は当講座 NO.76とNO.77の
記事でも紹介しました。
〈小社推薦論文〉
松永知子さん(金沢大学4年)の
卒業論文