398. あたらしい憲法のはなし
【2025年5月3日配信】
著作兼発行者:文部省
翻刻発行者:実業教科書株式会社
縦17.2×横12.2×厚0.3cm
全56ページ
『あたらしい憲法のはなし』
日本国憲法第九条「戦争放棄」について
中学一年生用教科書 (1947年.文部省) から
みなさんの
とうさんやにいさんを送りだされた人も多
いでしょう。ごぶじにおかえりになったで
しょうか。それともとうとうおかえりにな
らなかったでしょうか。また、くうしゅう
で、家やうちの人を、なくされた人も多い
でしょう。いまやっと戦争はおわりました。
二度とこんなおそろしい、かなしい思いを
したくないと思いませんか。こんな戦争を
して、日本の国はどんな利益があったでし
ょうか。何もありません。ただ、おそろし
い、かなしいことが、たくさんおこっただ
けではありませんか。戦争は人間をほろぼ
すことです。世の中のよいものをこわすこ
とです。だから、こんどの戦争をしかけた
国には、大きな責任があるといわなければ
なりません。このまえの世界戦争のあとで
も、もう戦争は二度とやるまいと、多くの
国々ではいろいろ考えましたが、またこん
な大戦争をおこしてしまったのは、まこと
に残念なことではありませんか。
そこでこんどの
けっして二度と戦争をしないように、二つ
のことをきめました。その一つは、兵隊も
軍も飛行機も、およそ戦争をするためのも
のは、いっさいもたないということです。
これからさき日本には、陸軍も海軍も空軍
もないのです。これを戦力の放棄といいま
す。「放棄」とは「すててしまう」という
ことです。しかしみなさんは、けっして心
ぼそく思うことはありません。日本は正し
いことを、ほかの国よりさきに行ったので
す。世の中に、正しいことぐらい強いもの
はありません。
もう一つは、よその国と争いごとがおこ
ったとき、けっして戦争によって、相手を
まかして、じぶんのいいぶんをとおそうと
しないということをきめたのです。おだや
かにそうだんをして、きまりをつけようと
いうのです。なぜならば、いくさをしかけ
ることは、けっきょく、じぶんの国をほろ
ぼすようなはめになるからです。また、戦
争とまでゆかずとも、国の力で、相手をお
どすようなことは、いっさいしないことに
きめたのです。これを戦争の放棄というの
です。そうしてよその国となかよくして、
世界中の国が、よい友だちになってくれる
ようにすれば、日本の国は、さかえてゆけ
るのです。
みなさん、あのおそろしい戦争が、二度
とおこらないように、また戦争を二度とお
こさないようにいたしましょう。
以下参考
手と足をもいだ丸太にしてかへし
胎内の動き知るころ骨がつき 鶴 彬
『川柳人』第281号
(井上信子編・1937.11.15発行)より
テーマ:「鶴彬の反戦川柳」
第40回鶴彬・井上剣花坊祭にて
2016.9.17 於盛岡市
以上当講座記事NO.15、159から
ベルリン在住めいこさん
「くにまもる珠玉の宝なぜすてる」
西山誠一さん
「あやまりをあやまりてこそ」
日本国憲法
第二章 戦争の放棄
第九条
① 日本国民は、正義と秩序を基調とす
る国際平和を誠実に希求し、国権の
発動たる戦争と、武力による威嚇又
は武力の行使は、国際紛争を解決す
る手段としては、永久にこれを放棄
する。
② 前項の目的を達するため、陸海空軍
その他の戦力は、これを保持しない。
国の交戦権は、これを認めない。