345. 東京の空は何色
【2024年6月9日配信】
小池学歴詐称問題に想う
八王子市 高岡 芳朗
小池百合子東京都知事の学歴詐称問題が
かまびすしい。学歴詐称は現公職選挙法で
は違反であり、法を犯して公職についてい
る小池氏はその座を降りなければならない
のは論をまたないが、別の角度から、この
問題に私見を少し述べてみたい。
例えばプロ野球の長嶋茂雄・星野仙一や
大相撲横綱の輪島大士らはそれぞれの出身
大学を卒業しているのだろうか。卒業証書
は持っているのだろうか。彼らはそんなこ
とはどうでもいいことだろう。授業に出て
いたかどうかも疑わしい。事実、試験の答
案用紙に自分の名前さえ書けば白紙の答案
でも合格点が与えられたという話も聞く。
あるスポーツ紙で、隠しもせず嬉しそうに
そのように語っていた元担当教官もいた。
小池氏もそのような調子と期待で進級試
験に臨んだけれど、当時のカイロ大学はそ
れを認めてくれなかった、ということでは
ないだろうか。
私自身のことで言えば、まともに授業に
出た記憶はなく、さらに嫌いな授業は一切
出なかったが、レポート提出だけで試験な
しという教官の方針で、卒業論文も通って
卒業証書ももらった。その証書は今どこに
あるのかも分からないが。
当時の大学の教官にしても学生に単位を
与えるかどうかは教官と学生の信頼関係に
よって決めていた例がかなりある。授業に
皆出席しても見込みのない学生には単位を
与えなかった例もある。それで留年した学
生もいた。実態はこんなものだった。また、
それでよかったと思う。大学での学び方は、
人それぞれである。
要は大学を卒業したかどうか、入学・編
入学したのか、中退だったのかなどはどう
でもいい話だ。冒頭でも述べたが、現行公
職選挙法がそれを重大問題にしているだけ
である。ある意味、小池氏はこの公職選挙
法の条文に挑戦している、あるいはこれを
ちゃっかり利用、活用、運用、悪用してい
ると言えるのかもしれない。そして、現に
これが今のところ功を奏しているのである。
この問題の本質は、小池氏の都知事とし
ての政策、行政手腕、行政実績が問われな
ければならないということである。それを
問うのは、小池氏自身と東京都民である。
図らずも小池氏はこれまでの自らの生き方
も問わなければならなくなってしまった。
謝罪か開き直りか逃亡か、プロ野球選手や
大相撲力士のように初めからカイロ大学出
身と言っていればよかったのだ。
私のこれまでの経験からもうひとつ言え
ることは、政治家にかぎらず日本における
三大詐称は学歴経歴詐称と宝くじ大金当籤
放言と有名人との恋愛体験虚言である。そ
のような事実も根拠もなく絵空事を自慢気
に語る語り手に出会うたびに、またかとい
う複雑な思いに駆られる。この有り様は、
学歴拝金虚構信仰とでも言うべき今の世の
反映とも言える。
小池氏にかぎらず現職政治家のなかにも
学歴経歴詐称、学歴浄化をしている人物が
少なからずいると私は感じる。それゆえこ
の問題に対する政治家からの批判がないの
ではないだろうか。新間正次氏の大学入学
詐称事件とはいったい何だったのだろうか。
日本社会は、この詐称社会から抜け出られ
るのだろうか。
政治家は嘘をつかず、学歴にも頼らず、
志をもって自らの政治理念、政治哲学、政
権構想を国民にしっかり訴え、信頼を得て
実行しなければ話にならない。民主主義、
大東京の大空が泣く。
〈後記〉
小泉進次郎衆議は学歴浄化の見本である。
当講座の NO.251 に高岡芳朗さん執筆の
同衆議批判記事があります。
「学歴を武器にこれまでの人生を歩んできた
のではない。芸能界では学歴は通用しない。
この判決は学歴に頼ってきたようで悔しい」
2024.6.9朝 劔岳と富山湾