260. 哲学の時代へ(10)懐奘・道元の仏意
【2022年7月9日配信】
歩めども道ははてなし瀛州路
福井県吉田郡永平寺町
清水 麗子
〈参考〉
示して云く、故僧正建仁寺におはせし時、
独りの貧人来りて云く、我が家貧ふして絶
煙数日におよぶ。夫婦子息両三人餓死しな
んとす。慈悲を以て是れを救い給へと云う。
其の時房中にすべて衣食財物等無し。思慮
をめぐらすに計略つきぬ。時に薬師の像を
造らんとて光(くわう)の料に打のべたる
銅少分ありき。是れを取て自ら打をり、束
ねまるめて彼の貧客に与へて云く、是れを
以て食物にかへて餓をふさぐべしと。彼の
俗よろこんで退出しぬ。
時に門弟子等難じて云く、正しく是れ仏像
の光なり。これを以て俗人に与ふ。仏物己
用の罪如何ん。
僧正の云く、誠に然り。但し仏意を思うに
仏は身肉手足を割きて衆生に施こせり。現
に餓死すべき衆生には、たとひ仏の全体を
以て与ふるとも仏意に合ふべし。
亦云く、我れは此の罪に依て悪趣に堕すべ
くとも、只衆生の飢へを救ふべしと云々。
先達の心中のたけ、今の学人も思ふべし。
忘るヽこと莫れ。
懐奘『正法眼蔵随聞記』第2.2-2より
懐奘
専長寺所蔵の阿弥陀如来
(当講座記事NO.70から)
〈後記〉
不思議な元総理暗殺劇である。
昨日の安倍晋三氏への襲撃事件は、映像
を見るかぎり、警護や周囲の人たちは無事
だったようだ。
弾丸はどの角度から来たのだろうか。撃
たれた瞬間の安倍氏ワイシャツ右襟の揺ら
ぎも気になるところだ。弾は見つかったの
だろうか。
また報道によると、容疑者とされる人物
は、ある特定の宗教団体に恨みをもつ元海
上自衛隊員だという。
これらの事実、真相がいかなるものであ
れ、いずれにしても政治家・安倍氏が失脚
したことは間違いなく、このことは清和会
政治の完全終焉を告げるものである。
憲法9条を逸脱した安倍氏の軍備増強等
の軍事的発言が国連憲章の敵国条項に触れ、
この悲劇を自ら招いたとも考えられる。
また、明日の参院選の結果にかかわらず、
改憲の道は遠のいたといえる。自衛隊員の
命も守られた。このこともこの事件におけ
る不思議な意味をもつ。
さらに、この宗教団体とは、これまでの
安倍氏の言動から見て統一教会であろう。
事件後すぐに、マスコミが統一教会へコメ
ントを求めず、統一教会も声明を出さない
のが不思議だ。
江戸末期および明治以来、戦争や要人の
暗殺は世を暗くするものばかりであったが、
昨日の出来事は、これまでの日本の歴史に
はなかった、これから日本が新しい世界に
向かうことになるという、これも不思議な
意味をもつものだ。
ロシアのウクライナへの進攻やプーチン
の欧米への勝利言及、英ジョンソン首相の
辞任表明なども同様の流れである。
そして一方、懐奘、道元が飢餓にあえぐ
人々に仏像の光背を与えた、与えんとした
事実、動機が仏意にかなうなら、自らを宗
教者と名乗る全人は、おのが身に纏ってい
るこれまでの権威の法衣をかなぐり捨てて、
慈悲や愛の真心をもって今こそ世の弱者と
真摯に向き合うことを切に望む。(編集人)
参考当講座記事
〈小社推薦図書〉
和賀真也編著
『統一協会と文鮮明-青年達の心理を探る』
(1981、新教出版社)
『統一協会-その行動と論理』
(1978、新教出版社)
茶本繁正著
『原理運動の研究』
(1977、晩聲社ルポルタージュ叢書)
有田芳生著
『統一教会とは何か-追いこまれた原理運動』
(1992、教育史料出版会)
2022.8.8 日刊ゲンダイ
有田芳生氏インタビュー記事
2022.7.17 ABEMAニュース
世界平和教授アカデミー - Wikipedia
2022.7.18
文明アナリスト・新井信介さん発信
2022.7.18 JBpress