244. 絵に寄せて
【2022年4月14日配信】
岸 静香 作 「南画の指導は四君子から」
墨で描く禅の心
南砺市城端 岸 静香
私は、水墨画の魅力にひかれて昭和四十
三(一九六八)年、南画家・故天野青霄先
生に師事させていただきました。
「南画」の基本は四君子(蘭・竹・菊・
梅)に始まります。先生のご指導のなかで
特に「墨の濃淡と空間を大切にしなさい」
との言葉をひたすら守って制作にとりくん
できました。
小学生時代から絵を描き始めてもう六十
年になります。「南画」は中国の「南宗画」
を起源とする水墨淡彩画です。水墨の独特
の抒情を見せた南画には、昔から「気韻生
動」という言葉があります。この言葉は中
国絵画の要点として画論に書かれています。
絵を描くうえで最も大切であると思います。
「南画」の特色は、柔らかな印象を淡く
上品に表現することにあります。描かれる
線は鋭さのない優美な曲線であり、墨色や
色彩も淡墨や淡彩を重ね描きすることで得
られる気品の高い柔美な絵です。
現在では「現代南画」に変わりつつ、日
本の自然の風景や花、伝統行事などのモチ
ーフが好まれるようになりました。
「現代南画」は、日本の温暖湿潤な自然
を表現するのに適した描き方で極彩色を避
ける絵が多く、日本人の心の琴線に触れる
情感豊かな作品で多くの人に支持されてい
ます。
私にとって絵を描くことは、究極であり、
生命を左右する仕事であります。他の仕事
と違って、これでいいという限界はありま
せん。絵を描く時は、自然を静かに見つめ
温かい心で物事をとらえます。
感じる生気との密接な交流と、自分の内
にある情念を虚実の世界に誘います。
絵を描くことは、私にとっては、心に感
じた形や色を画面に写し、心の内側を描く
ことです。人と絵とのコミュニケーション
であり「一期一会」の素敵な出会いに「感
謝」をしなければなりません。「おもてな
しの心」「有り難うの心」「前向きな心」
「人から愛される心」「やさしい心」をい
つも大切にしています。絵を通じて見る人
との交流が大切だと思います。絵を描く私
の心情を綴りました。
(南砺市 福光美術館・愛染苑
『友の会報』第33号から)
〈参考〉