364. 秋扇
【2024年10月2日配信】
秋 加賀市 鈴木 きく
夕顔の花びつしりと咲きはじめ
秋の近きを身に思う
亡き母の思い出たどる盆の日に
このみしコスモス一輪咲きぬ
蟹 氷見市 加納 韻泉
孫去りし後に小さき音のして
捕りたる蟹の玄関に這う
秋日和 砺波市 舘田 信子
新築の祝いに招かれわれもまた
この家の主に栄えあれじと
遊園地家族で行けるうれしさを
態度で示す隣家の子らは
深みゆく秋 金沢市 浜田 弥生
天高く小鳥の声も澄み渡り
うましこの世と老いも忘るる
秋の雨いとやわらかにぬかるみに
散りししだれし花びらにそそぐ
秋の夕陽 小矢部市 酒匂 浩三
海に入る夕陽を見んと佇めば
波来る茜のまぶしかりける
夕陽さす納屋の隅なる腰板に
父の仕事か地下足袋の跡
毎晩が祭りのようなご馳走に
勿体なやと敗戦時思う
北風に葉っぱを散らす大欅
新緑思えば切りたくもなし
城のある遊園地にて孫の守り
昏れなん空に雁渡りゆく
在満時奉公袋をふろ敷に
包んで征きし朕が命令
征きし時生きて還ると思わざる
若き日の人遠くに住めり
秋の気配 愛知県日進市 飯井 文子
打ち水の光のなかに秋の香が
秋 富山市 木村 美津子
君恋う心に寒しすき間風
集まりし白髪の波に秋深し
眼ざしも柔らかになり秋寂し
友逝きてショックも去りすず虫の声
友も無く愛しい人も無く本を読む
不自由な眼の片隅に愛が見え
武さし野の如く草の生え秋楽し
人の世の出逢い悲しき別れかな
戦争未亡人と云う名札下げ四十二年
亡き人に一度逢い度し六十路夢
秋扇 富山市 表 古主衣
秋扇忘れし胸のポケットに
新裂齊紈素 新製の斉紈の素
皎潔如霜雪 皎潔霜雪の如し
裁作合歡扇 裁ちて合歓の扇と成す
團團似明月 団団として名月に似たり
出入君懷袖 君が懐袖に出入りし
動搖微風發 動揺して微風発す
常恐秋節至 常に秋節の至りに恐れる
涼飆奪炎熱 涼颷の炎熱を奪はんことを
棄捐篋笥中 篋笥の中に棄損せられて
恩情中道絕 恩情中道に絶える
新しい斉の白絹を裂くと
鮮かな色は雪のようです。
それを裁ってあわせ張りの扇を作ると
丸々として満月のように見えるのです。
その扇は天子様の懐に出入りして
動かされるたびに微風を発します。
でも、秋が来るのが辛いのです。
涼しい風が炎熱を吹き去ります。
この扇が箱のなかに捨て置かれるように
私への天子様の情愛が消えてしまいます。
去年喪愛女 今年喪愛子
哀哀光陵土 雙墳相對起
蕭蕭白楊風 鬼火明松楸
紙錢招汝魂 玄酒奠汝丘
應知弟兄魂 夜夜相追遊
縱有腹中孩 安可冀成長
浪吟黃臺詞 血泣悲呑聲
子供を哭す
去年喪愛女 今年喪愛子
哀哀光陵土 雙墳相對起
蕭蕭白楊風 鬼火明松楸
紙錢招汝魂 玄酒奠汝丘
應知弟兄魂 夜夜相追遊
縱有腹中孩 安可冀成長
浪吟黃臺詞 血泣悲呑聲
子供を哭す
野山獄中の吉田松陰が李卓吾の思想の
影響を受けたのであれば、松陰の尊王
攘夷の思想は、否定されるはずである。
長州・野山獄で自身の死を覚悟した松
陰は、本当は尊王攘夷を超える何か新
しい思想を育んだのではないだろうか。
そして、そのことによって、幕府から
死刑に処せられた、かつ明治政府にも
受け入れられず利用されて薩長土肥の
尊王攘夷思想の先人とされてしまった、
というのが事実、真相ではなかろうか。
また、尊王攘夷の思想すら捨てて明治
政府の重鎮となってしまった松下村塾
塾生に対しても松陰は泣いているだろ
う。高杉、久坂、吉田、入江の四天王
も。大和魂とはいったい何だったのか。
婉という女・金沢ライブ録音