468. 川沿いの小道で
【2026年7月31日配信】
子供たちの声
小川 文人
地震が比較的少ない北陸に生まれ育った
僕が関東に移り住んだ当初は、あまりにも
頻繁な地震に驚かされたものです。真夜中
に地震に見舞われた時には当時住んでいた
安アパートが今にも崩壊するかと思うほど
大きく揺れ動き、びっくりして飛び起きま
した。
大きな地震の際には駐車している車が、
まるでダンスを踊っているかのように、元
気よく飛び跳ねます。
およそ 100年前に起きたという関東大震
災級の大地震が近いうちにまた起きるので
はと皆、心の底では恐れています。
さてその地震の際には要注意の一つの或
る断層に沿って、川が流れていて、川沿い
の小道は僕の散歩コースになっています。
「現代の声」の愛読者の皆様に、最近の
「子供たちの声」をご紹介しましょう。
先日の少し風が強く吹く土曜日、川沿い
の小道を歩んでいましたところ、小学生の
兄弟らしい二人連れが自転車で僕を追い抜
いていきました。
追い抜いていきつつ、兄が弟に言います。
「ぼくは10年後に死ぬよ」。
まだ幼い弟は問いかけます。
「お兄ちゃんは10年後に60歳になるの
?」。
兄は答えます。
「20歳だよ。たぶん自殺するんだよ」。
僕はこのやり取りに、あっと驚いて、声
をかけようとしましたが、兄弟の自転車は
もう橋を渡り、木枯らしの中を去っていき
ました。
二台の自転車は、落ち葉があとからあと
から舞い落ちる木立の中を、みるみる遠ざ
かっていきます。
僕の住んでいる地域はけっして都市部で
はなく、鉄道の駅もない多摩の田舎です。
放課後に、路上で子供たちが遊んでいる
所に歩み寄っていき、
「****はどこかなー?」
と道を尋ねると、中小企業の工場が多く、
皆助け合って生きているからでしょうか、
誘拐など恐れず、案内してくれるくらい子
供らしい子供たちですが、やはり現代とい
う複雑な時代がどこかしら影を落としてい
るようです。
当講座記事NO.68再掲