407. ふるさとなまり【会話編】
【2025年6月21日配信】
328 ふるさとなまりの続き
おばばの言葉
白山市 番匠 俊行
運動会 リレー 隔世遺伝
太郎「おばば、あした、うんどかいやぞ。
見にこりっか」
おばば「さっ、行かんならんなん。
たっりゃあ、なんにじるがや」
太郎「リレと、玉入れと、騎馬戦や」
おばば「ほっりゃ、楽しっみゃな。
たりゃあ、あしゃ、はえがか」
太郎「ぐわっこじ、一番はえげ」
おばば「おっりゃー、ほんとかいに。
とうちゃんな、あしゃ遅かったがに。
かあちゃんも、はよねーげやけんど」
太郎「たろ、だりに似たんかにん」
おばば「おばば、はえかったがや。
たりゃ、おばばに似ち、いかったな。
あしたんリレ、しょこにいりち走ろぞ。
きばっとっしな」
太郎「おーん」
翻訳
孫「ばあちゃん、明日、運動会だよ。
見に来れるかい」
祖母「そらあ、行かなくちゃ。
太郎は何に出るの」
孫「リレーと玉入れと騎馬戦だよ」
祖母「そりゃあ楽しみだね。
太郎は足が早いの」
孫「学校で一番早いんだよ」
祖母「まあー、それはすごいね。
太郎のお父さんは足が遅かったのに。
太郎のお母さんも足が早くないのに」
孫「太郎、だれに似たのかなあ」
祖母「ばあちゃん足が早かったんだよ。
太郎はばあちゃんに似て良かったね。
明日のリレー、力いっぱい走ってね。
応援してるよ」
孫「よーし、がんばるぞ」
米不足 おすそわけ 隣人愛
おばば「めーどそん、だりもおらんがか」
隣のおじじ「おっろー、いまいくぞー。
なんや、たろちゃんのおばばんねか。
どしてん、なんやったけ」
おばば「ちょっこ、こみ分きちもろいんか。
こっみゃに、こみぃ、こうにったら、
こみゃ、ねーちゅんがや」
隣のおじじ「な、なんやち。
こんみゃに、こみゃ、ねーちか」
おばば「おいに。んな、せーもんどったわ」
隣のおじじ「じょんな娑婆になっとんな。
うらんちの、こみびつから、どっだきじも、
持っちくまっし」
おばば「きのどっきゃにーん。
ほんな、ちょっこし、もろちくぞいに。
ここに、じん置いちくさき」
隣のおじじ「ほんなもん、いらんわいや。
こみ、ねーよんなったら、またいらっしま」
おばば「あんやと。
ほんな、なんかじ、お返しすっし」
隣のおじじ「うちゃ、ひゃくしょやしん、
こみょ、たんと余らしとる。こねだも、
高砂部屋に、でけと送っちゃったがやぞ」
翻訳
祖母「こんにちは、だれもいないの」
隣人「いるよー、すぐにいくよー。
なんだ、太郎ちゃんのばあちゃんか。
どうしたんだ、なんか用か」
祖母「少し米を分けてもらえないかね。
米屋に米を買いにいったら、
米がもうないと言うの」
隣人「な、なんだって。
米屋に米がないなんて、どういうことだ」
祖母「おかしいね。みんな怒ってたわ」
隣人「変な世の中になってるなあ。
うちのそこの米櫃から、どれだけでも
持っていけばいいよ」
祖母「ありがとう。
じゃあ少しもらっていくよ。
ここにお金を置いていくから」
隣人「そんなもの、いらないよ。
米がなくなったら、いつでも来てよ」
祖母「ありがと。
それじゃ、何かでお礼のお返しするわ」
隣人「うちは農家だから、万一のために
米をたくさん備蓄している。この間も
高砂部屋にたくさん贈ってやったんだよ」
太郎「おばば、たろ、でこなったら、
すもとりに、なっぞ」
おばば「おとろっしゃー、なんじや」
太郎「たろ、ぐわっこじ、一番、すも、
きついしん。得意わざな、右四つじ、
呼びもどしと下手ひねりと内無双やぞ」
おばば「おっとろっしゃー。たっりゃ、
死んだ、おじじんに、似たがやな」
太郎「おじじも、きつかったんか」
おばば「おいに。おじじゃ、すも、
でえ好っきゃった。町の、すも大会じ、
なんびんじも、優勝しとったぞいに」
太郎「おーし、ほんなら、たろな、
横綱になっちゃる」
おばば「たりゃ、しこな、決みちゃるがか」
太郎「美川海太郎やぞ」
おばば「美川海やちか、いい名前やなーん。
たりょん名、おじじゃ、横綱朝潮太郎から、
あやかっち、つきたんやぞ」
太郎「ほんとけ。ほしたら、たりょ、
高砂部屋に、いかんなんに。
大の里よっか、きつなっぞ」
おばば「楽しっみゃな。北陸二大横綱やじ。
なげだ、生きとらんならん」
翻訳
孫「ばあちゃん、太郎、大きくなったら
相撲取りになるよ」
祖母「すごいねー、どうしてなの」
孫「太郎、学校で一番、相撲も
強いんだよ。得意技は、右四つからの
呼びもどしと下手ひねりと内無双だぞ」
祖母「ほんとにすごいねー。太郎は、
亡くなったじいちゃんにも似たんだね」
孫「じいちゃんも相撲が強かったの」
祖母「そうだよ。じいちゃん、相撲が
大好きだった。町の相撲大会で、
いつも優勝してたよ」
孫「よーし、だったら太郎は、
横綱になってやるぞ」
祖母「太郎、四股名はもう決めてあるの」
孫「美川海太郎だよ」
祖母「美川海だって。いい名前だね。
太郎の名、じいちゃんが横綱朝潮太郎に
ちなんでつけたのよ」
孫「そうだったの。だったら太郎、
高砂部屋に入門しなくちゃ。
大の里よりも強くなるぞ」
祖母「楽しみだなあ。日本海二大横綱だね。
長生きせなならんわ」